武田信玄は“五割の勝ち”を最良とする—
1.これはなに?
誰かに対して遺された言葉や作品は、その人の人生が詰まっています。
サンテグジュペリの『星の王子さま』も、目には見えない大切なメッセージをストーリーという形で子どもたちに伝えようとしています。
偉人が、子孫や家臣に向けて遺した言葉は、“遺訓” と呼ばれますが、
それらを取り上げながら、日々の学びに変えていこうというのが、
“遺訓探訪” シリーズです。
ぜひ、みなさんの解釈についてもお聞かせいただけると幸いです。
シリーズの第2回は、戦国の雄、武田信玄の遺訓。
家康が忍耐を説くきっかけとなった三方ヶ原の戦いの相手です。
彼の菩提寺である甲斐恵林寺の石碑に残っている、勝利についての教えを取り上げます。
2.武田信玄の遺訓:軍勝五分をもって上となす
およそ軍勝五分をもって上となし、
七分を中となし、
十分をもって下となす。
そのゆえは、五分は励みを生じ、
七分は怠りを生じ、
十分は驕りを生ずるがゆえ、
たとえいくさに十分の勝ちを得るとも
驕りを生ずれば、次には必ず敗れるものなり。
すべて戦いに限らず、世の中のこと、
この心がけ肝要なり。
3.所感
信玄公の言葉に対し、まず、戦(勝負)は連綿と続いていくものであるという前提を強く感じました。
目下の勝利ももちろん大事です。
だからこそ、十分の勝ちも “下”と、もっとも望ましくはないものの、否定はしていません。
ただし、1度勝つことが目標ではなく、
勝ち続けることが重要なんだ、と。
次の戦で負け、命を落としてしまっては本末転倒。
命がけの戦乱の世だからこその考えだという風に受け取りました。
その前提の下で、
励みになるような勝利ではないといけない、
奢りや怠りが生じてしまうような勝利は避けなければいけない
と説くわけです。
奢りは、戦場に合って戦況の判断を誤らせ、怠りは次に向けた準備を鈍らせ、不覚をとる危険性を高めます。
中庸が徳のある状態だとする考え方もあるように、何事も ”ほどほど” がいいんだな、
戦いにおいてもそうなんだ、なるほどと思うのですが、
これはあくまで心構えとして、謙虚であることを薦めているようにも思いました。
周囲から完璧な勝利だと評判を得たとしても、いやいやまだまだと基準を高く定める。
望外の結果を得ることができたとしても、喜びも束の間、もっとできたよねと振り返る。
すべて戦いに限らず、世の中のこと、
この心がけ肝要なり。
とありますが、なかなかどうして、落とし穴の多い人生において、失敗に陥らない心構えとして大事な考え方だと思いました。
4.さいごに
改めてですが、“遺訓探訪” シリーズは、人間修養中の身である自分としても、学んでいく意識で取り上げていきます。
ぜひ、みなさんの解釈についてもお聞かせいただけると勉強になります。
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