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ジェンダー代名詞から見る、北欧諸語のリアル。英語theyとは少しちがう、単数形のジェンダーニュートラルな代名詞とは?

こんにちは、bokhelg(ボークヘリィ)です。
記念すべき第1回目は、私たちふたりから切っても切り離せない「スウェーデン語」に関するテーマを取り上げます。
今回ご紹介するのは、スウェーデン語で使用されているジェンダーニュートラルな代名詞、Hen。代名詞の話題から派生して、ジェンダー表現についても少し考えてみます。

Nu kör vi!


スウェーデン語の代名詞 Hen

スウェーデン語って、馴染みがない人の方が多いかもしれません。主にスウェーデン、フィンランド(フィンランドはフィンランド語もあります)で使用されていて、ゲルマン語族に属しています。そのため英語と似た単語もたくさんあり、英語を既に学んでいると比較的取り組みやすい言語だと思います(少なくとも私は学び始めた時にそう思いました!笑)

では早速今回の本題に入っていきましょう!
タイトルにある通りスウェーデン語の代名詞を紹介します。代名詞とは、英語でいうところのShe(彼女)、He(彼)などのことですね。スウェーデン語の三人称単数の代名詞は3種類あります。Hon(彼女)、Han(彼)、そして性別を特定しない代名詞「Hen」です。
Henは、男や女といった性別に自身をカテゴライズしたくない、またはできない人を指すときに使う言葉であるとスウェーデン語の辞書では説明されています。

スウェーデン語辞書におけるhenの説明

Henという単語自体は1966年から存在していましたが、実際にジェンダーニュートラルな代名詞としてhenに光が当たったのは、「Kivi och monsterhund(キヴィとモンスタードッグ)」という本が出版されたあとの2012年のことです。この絵本は初めて”hen”を使用した絵本で、主人公キヴィは女の子でも男の子でもない単なる子供として描かれています。本屋さんで店頭に並ぶ前からスウェーデン国内でも話題に。作者のJesper Lundqvist(イェスパー・ルンドクヴィスト)は、”私は、この本を待ってくれていた人や全ての子供たちのために書いた”と語っています。女の子や男の子といった区別なく、単に”子ども”が描かれた絵本を読みたいと思ったときに選択肢があまりないということは良くないことだから、と。
男の子は元気いっぱいで女の子はおままごとが好き、といったようなステレオタイプなイメージを子供に押し付けてしまっていることに対して問題提起をしています。2012年からそのことが議論されていたという事実に、やっぱり日本より進んでいるなぁ…と感じざるを得ません。

英語の代名詞they

さて、ここまでスウェーデン語のhenを紹介しましたが、英語では「they」がジェンダーニュートラルな代名詞として使われていることはご存じの方も多いと思います。たしかtheyは中学校の英語の授業で、「彼ら」という複数形の代名詞として学習しましたよね。
ですが数年前から、単数形の代名詞としての使用が注目されているんです。

アメリカのMerriam-Websterという辞書が毎年年末に発表する今年の言葉では、2019年に「they」が選ばれました。Merriam-Websterでは「they」の意味に、「性別が明らかにされていない人たちを指す単数形の代名詞」「性自認がノンバイナリーの人たちを表す単数形の代名詞」という説明を加えています。時代や社会に合わせて、新しい言葉が作られたり意味が付け加えられたりするのは素敵なことですね!

SNSのプロフィール

ここでちょっと話が派生しますが、最近SNSのプロフィールに、「She/Her」「He/Him」「They/Them」と書かれてあるのを目にすることが増えましたよね。Instagramでは代名詞を選べる項目があります!これは、その人が自身の性別を周りの人にどう認識してほしいかを表現しているものです。
「She/Her」であれば女性、「He/Him」は男性、そして「They/Them」は性別を特定されたくない・したくないという意思表示です。

私たちは無意識のうちに、服装や体格、髪型などの見た目だけでその人の性別を勝手に決めつけてしまいがちです。そして多くの人がその決めつけに特に違和感を持たずに、見た目で性別を判断するのが”当たり前”の世界で困ることなく生活できています。ですがその世界で違和感を感じている人・嫌だなと思っている人もいます。この社会には様々な人が存在しているのに、目の前の人の性自認なんて見た目だけでわかるわけないですよね。その外見だけではわからない性自認を表明するための方法として、プロフィールに代名詞を記載しているのです。もちろん、性自認は公表しなければならないものではない、ということも忘れないようにしたいです。

・・・とまぁ話がかなり脱線してしまいましたが、今回のテーマはスウェーデン語の代名詞「Hen」でした。いかがでしたでしょうか?

日本語にはHenやTheyにあたるような代名詞は今のところありません。日本では日常会話で代名詞を使うことがあまりない(名前で呼ぶことの方が多い)ので、なかなか議論にならないのかもしれません。何年か前から、学校で先生が生徒のことを全員さん付で呼ぶようになるなど、少しずつではありますが変化も感じられます。ただやっぱり友達との会話などでは、相手に確認することなく名前の後に“ちゃん”か“くん”を付けて呼ぶ習慣が浸透してしまっていますね。
日本は性的マイノリティについての理解が他国と比較して遅れている、という現状も無視できません。日本語も日本も、スウェーデン語や英語のように時代に合わせてアップデートしていってほしいなと思います。

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参考文献

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