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静かに息づく酢造りの伝承

丹後の伝統を紡ぐ
飯尾醸造とその富士酢の魅力


京都府宮津市小田宿野に位置する飯尾醸造は1893年に創業した老舗の酢造りメーカーです。

この地で作られる「富士酢」は全国的にも高い評価を受けており、丹後地方の豊かな自然と伝統的な製法を守り続ける飯尾醸造の代表作と言えます。


飯尾醸造の歴史と背景


飯尾醸造は明治時代に創業し、五代にわたって家業を守り続けています。
初代が地元農家から米を譲り受けて酢造りを始めたことから、現在に至るまで、米を中心にした製法を貫いています。現当主である五代目の飯尾彰浩氏は、大学卒業後に一度は東京で働いた後、家業に戻り、飯尾醸造の伝統と革新を担っています。

無農薬米と手間暇をかけた酢造り


飯尾醸造の特徴は、全ての製品に自社で栽培した無農薬米を使用している点です。

この米は、上世屋の棚田で手間暇をかけて育てられ、秋にはボランティアを募って田植えや稲刈りが行われます。こうして収穫された米は、まず日本酒に仕込み、その後、酢造りに使用されます。


酢造りは、まず自家製の麹を使って日本酒を醸造し、その日本酒を原料にして酢酸菌で発酵させます。
この発酵には約100日間が費やされ、さらにその後250~300日間熟成させる「静置発酵」という伝統的な手法が用いられます。

静置発酵は酢の風味をじっくりと引き出し、まろやかで深みのある味わいを生み出すための手法です。
この方法を守り続けている蔵は、現在では非常に少なくなっており、飯尾醸造の製品が特別な存在であることが理解できます。

富士酢の品質とこだわり


「富士酢」は、飯尾醸造が作り上げた製品の中でも特に人気の高い商品です。

その名は「日本一の酢を作りたい」という願いを込めて名付けられました。
富士酢は、無農薬米と時間をかけた伝統製法によって作られるため、その品質は非常に高く、多くの料理人や家庭で愛用されています。

この酢は、旨味成分であるアミノ酸が豊富に含まれており、まろやかな口当たりが特徴です。
さまざまな料理に使用できるだけでなく、調味料としての存在感も抜群で、素材の味を引き立てる役割を果たします。さらに、富士酢プレミアムといった上位ラインの製品も提供されており、より一層のこだわりが詰まった商品として支持を集めています。

飯尾醸造の蔵見学と体験


飯尾醸造では、一般の方が蔵を見学し、酢造りのプロセスを体験することができます。事前予約が必要ですが、見学では酢造りの工程を学びながら、試飲を楽しむこともできます。
また、蔵に併設されたショップでは、製品をお得に購入することも可能です。

この見学は、ただの工場見学ではなく、丹後の伝統と文化を体感できる貴重な機会です。
酢造りの背景にある手間暇や、地域との深いつながりを実感することで、商品への理解と愛着がさらに深まるでしょう。

伝統と革新の融合


飯尾醸造は、伝統を守り続ける一方で、現代のニーズにも対応した取り組みを行っています。

例えば、瓶詰め作業のオートメーション化や、品質管理の徹底など、効率化と品質維持の両立を目指しています。これにより、今後も安定して高品質な製品を提供し続けることが可能となります。

また、同社では全国の消費者を対象にした田植え体験や稲刈り体験を行うなど、地域との結びつきを強める活動も行っています。これらの取り組みは、単なる商品提供を超えて、地域文化の発信と保存にも貢献しています。



飯尾醸造の富士酢は、丹後の自然と人々の努力によって生まれた逸品です。

無農薬米から手間暇をかけた酢造り、そして伝統を守りつつも革新を取り入れた製品作り。そのすべてが一つのボトルに詰まっており、料理を通じてその魅力を味わうことができます。
丹後の地を訪れる機会があれば、ぜひ飯尾醸造を訪れて、そのこだわりと情熱を感じてみてください。

営業情報:

• 営業日: 月曜日~金曜日(祝日を除く)
• 営業時間: 午前9:00~12:00、午後1:00~5:00
• 定休日: 土曜、日曜、祝日

※蔵見学は事前予約が必要ですが、製品の購入には予約は不要です。訪問の際には営業時間内にご利用ください。

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