名作探訪 その19 リアルタイムの競りという臨場感 『魚河岸物語』
こんにちは。
ボードゲームデザイナーの山田空太といいます。
今回は、ボードゲーム 名作探訪シリーズ その19をお送りします。ご紹介するゲームは、アンドレアス・ペリカン作の『魚河岸物語』です🐠🐠🐠
ボードゲーム 名作探訪 : 皆さまに是非とも遊んでほしいボードゲーム紹介のシリーズです。1990〜2015年くらいのファミリーストラテジーのゲームを中心として、100作を目指して書いております。
前回の記事はこちらからどうぞ⇩
アンドレアス・ペリカンは、オーストリア出身のゲームデザイナーです。代表作は、『魔法にかかったみたい』『ブルームサービス』『アイル・オブ・スカイ』など。
『魔法にかかったみたい』(2008)は、独特のバッティングのメカニクスを使ったカードゲームです。そして後に、『ブルームサービス』というボードゲームとしてリメイクされました。『ブルームサービス』は、アンドレアス・ペリカンとアレクサンダー・プフィスター2人の共作で、2015年のKDJを受賞しています。
余談ですが、翌年の2016年のKDJを受賞した『アイル・オブ・スカイ』も、アンドレアス・ペリカンとアレクサンダー・プフィスターとの共作です。この2人の共作が、2年連続でKDJ受賞したということになりますね。
魚河岸物語 / Cash-a-Catch, Fangfrisch
Designer: Andreas Pelikan
Artist: Jo Hartwig
Publisher: Queen Games
(2007)
3-5人
好み:AA
プレイ時間:30-40分
ゲームの概要
『魚河岸物語』は、魚市場を舞台にして、リアルタイムの競りをするゲームです。じっくりした細かな競りではなく、「まあいいや、えいっ!」って感じの競りです。魚市場の賑やかな雰囲気そのままに、リアルタイムの競りを行うというのは臨場感があって、すごく面白いです。
リアルタイムの競りというジャンル自体が、類似作品が少なくて珍しいかもしれません。そのため、このゲーム体験はなかなか他で味わえないため、『魚河岸物語』はぜひオススメしたいゲームなのです。
競りというゲームメカニクスは、相場を読み解き、相手の状況を把握しておかなければならず、実力差がつきやすいハードな部類に入ります。しかし、リアルタイムの競りになると、考えるより先に動かなければならず、正確な判断が難しくなります。わちゃわちゃとしたパーティー寄りのゲームになるのですね。
ゲームの進行を簡単に説明します。プレイヤーは魚市場で仲買人となって、魚を競り落とし、その魚を売って利益をあげます。親になるプレイヤーは時計回りの順に変わります。親は魚のカードが次々にめくり、子らがここだと思うタイミングでベルを鳴らして、魚を落札をしていくのです🛎
魚は、同種類を多く集めると高額で売却できます。しかし、自分の場には3種類までしか保管できません。保管できない魚はゴミ箱行き(マイナス点)になってしまいます。つまり、なるべく同じ魚を集めるのが大事。コロレット式ですね。
コロレット / Coloretto:ミヒャエル・シャハト作、セットコレクションのカードゲーム。場にあるカードのセットを数枚まとめて取り、同色のカードを集めて得点を競います。カード枚数が少ないとマイナス点になるので、色数を抑えて集めるのが大切です。
競りの方法は、親以外のプレイヤーが全員参加するリアルタイムの競り。と言っても、競り値をつりあげていく従来のものではありません。落札価格は固定のまま、落札する枚数が増えていきます。
落札価格は、常に10ユーロと定額です。親のプレイヤーが魚のカードを1枚ずつめくっていきます。場にあるカードがどんどん増えていくのですね。他のプレイヤーはここだと思うところで、早い者勝ちでベルを鳴らして落札します。
早い者勝ちなので焦ります。逆に、ぼやっとしていると、全然競り落とせません。あと1枚待とう…と思っているうちに、他のプレイヤーにベルを押されてしまう、そんな感じの競りゲーム。
魚をたくさん集めて一気に売ると、売却額は高くなります。
魚の数と売却額:
1 → 1€, 2 → 2€, 3 → 3€, 4 → 5€, 5 → 7€, 6 → 10€, 7 → 15€, 8 → 20€, 9 → 25€, 10以上 → 30€
誰かが魚を売却すると、同じ魚を集めていた他のプレイヤーの魚(カード1枚)が腐ってしまい、捨てなければなりません。なので、売り抜けるタイミングも大事。どんどん魚を溜める戦略は通じません。
ゲームデザインの観点から
『魚河岸物語』は何よりリアルタイムの競りの面白さ。競りゲームでは、競り値をつりあげていったり、同時入札で金額を競うのがよくある形。
しかし、このゲームでは落札価格は固定になっていて常に10ユーロ。つまり、10ユーロの中で、どれだけ多くの魚を競り落とすかというゲームになります。実際には切りの良いタイミングで落札を宣言するオークショナーの役割を、落札額を固定することでゲームに落とし込んでいるんですね。ここがこのゲームの工夫です。
リアルタイムの競りは、何か分からないけれども焦ってしまいます。ずっと競り落とせないと、明らかに損な取引のに、慌ててベルを押してしまったりして…。
まとめ
『魚河岸物語 / Fangfrisch』は、魚市場での活気のある競りを、臨場感を保ちつつ、うまくゲームに落とし込んだ一作。リアルタイムの競り、白熱して面白いです!
ぜひ一度遊んでみてください。
今日のnoteは以上です。
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