【Emile】12.Emile【完】
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罅が入った天井の隙間から、一筋の光が、彼らを照らしました。
太陽が登ってきたのです。人々は [ 女王の愛 ] を捨て、醜い塊を受け入れ、この地を踏みました。
それは、一人の人間として生まれたことを表していました。母親の守りを失った子供たちは、不安や苦しみに苛まれ、この醜い世界を生きていかなければならなくなったのです。
「よく断ち切ったね、オヴ。君は、大人になったんだ。大丈夫。なんて変わりはない。ただ、一人の人間になっただけさ。」
「ありがとう。エル。」
混じり合った世界に登る太陽が、
彼らを照らしました。
「夜明けだ。」
暗闇に光がさしました。
オヴは、何も言わず、静かに涙を流しました。
それはまるで、赤ん坊の産声のようでした。
「生きてみせる。何があっても。」
オヴはエルの顔を見ました。光に照らされたオヴの顔はとても美しいものでした。
「そうさ、これから君は、たくさん傷ついていくことになるだろう。でも大丈夫、だから、どうか忘れないで。」
「忘れないよ。」
太陽に照らされたこの大地は、あたり一面、紫の花が咲き乱れました。この花は、時が経てばいずれは枯れていくのでしょう。
春がきて、夏がきて、秋が来て、そして、死んでいく冬、しかし、また春がくる。生と死が繰り返されるこの世界は、とても醜いものです。
人々は、傷つけあい、苦しみ、泣いては果てしなく広がるこの世界は、とても苦しいものでしょう。
しかし、愛のある美しい世界でした。
「みてみて!お父さんが描いた絵!」
小さな子供が持つ、スケッチブックには、子供たちの似顔絵が描かれていました。「いいなー!私も描いて欲しかったなー!」そのスケッチブックの最後には、持ち主の似顔絵が描いてありました。その絵は、死に際に描いたと思われるものでした。優しい笑顔の、あの青年がいました。
そして、女王の世界の真実が記録された本たちは、消えてしまいました。
唯一残ったのは、一冊のおとぎ話の本。果てしなく広がる宇宙の話や、光る大きな太陽、そして自由に宙を飛び回る鳥たちの話が書かれたヘンテコな本です。
そして、そこには、この世界の真実の歴史が全て、書かれていました。そして新しく歴史の真実を、付け加えられたのでした。
どこからか、とても暖かいピアノの音が流れてきました。
その音楽は、どこか切なく、柔らかなものでした。
まるで、誰かに向けられた手紙のよう。
「この曲、素敵ね。お母様。」
「そうでしょう?」
「なんて名前なの?」
お母様と呼ばれた女性は柔らかな顔で微笑みました。
永遠に変わることのない愛。
心地いい風が、紫色の花を揺らしました。
広がる紫の花園
女王が歩けば、花が歌い、輝きを増す。女王の愛は未だ健在。
女王は自らの意志で、ナイフを握った。
臍の緒を断ち切った。
彼女は見てしまった。美しく輝く太陽を
彼は女王と共にある。
女王の心は、元に戻った。
光を浴び、輝く花達は、まるで私たちのよう。
女王は心を取り戻した。平和が訪れる。
愛を知った女王は、それを伝えるため、彷徨い歩く。
どこからか、とても暖かいピアノの音が流れてきました。
その音楽は、どこか切なく、柔らかなものでした。
まるで、誰かに向けられた手紙のよう。
「この曲、素敵ね。お母様。」
「そうでしょう?」
「なんてタイトルなの?」
お母様と呼ばれた女性は柔らかな顔で微笑みました。
永遠に変わることのない愛。
心地いい風が、紫色の花を揺らしました。
「エミール」