- 運営しているクリエイター
#連載小説
【Emile】2.女王のなくしもの
前の話はこちら↑
「ボケてきたんじゃないかな?」
お昼時、ヤタカの笑い声が食堂に響きました。数分前に、自習を終えた二人は食堂に向かいました。席に着くなり、ある噂話を耳にしたのです。
「まさか、なくした物が何かわからないなんてね。」そう、女王はとても大切なものをなくしたのです。しかし、なくなったことはわかるものの、それがなんなのか、女王本人にもわからないのだとか。
そして、その女王のなくし物
【Emile】1.ヤタカ
前の話はこちら↑
「母さんは、僕のことを愛してくれない。」
赤土色の髪をした少年が、眼鏡の奥の青い眼を天井に向けて、不満そうに言いました。
目線の先に広がる天井は、この世界を包み込むように存在しています。天井には大きな絵が描かれており、中心には、心臓に大きな穴が空いた人のようなもの、真っ赤な色をしています。
その人間の近くには宙に浮く大きな丸。この絵は、とても昔から存在していて、何
【Emile】0.はじまり
「ごめんね」
深夜1時9分。その日は、とても綺麗な夜でした。
人々は、眠りにつき、夢の中でした。
一人の逸れた蟻のような、小さな迷子の子どもがいました。その無垢な少女は、無花果の様な赤いドレスを身に纏い、 頭を抱え、目を塞ぎ、白い花の絨毯の上に、まるで胎児のように震えながら丸まっていました。
少女の恐怖の対象は、目を背けたくなる様な、とても醜い姿をしていました。それを受け