ハッピー・デス・デイ(2017年)※ネタバレ有り
ホラー映画を見てたら感動して号泣した。
監督
クリストファー・B・ランドン
メインキャスト
ジェシカ・ローテ(テレサ・”ツリー”・ゲルブマン役)
イズラエル・ブルサード(カーター・ディヴィス役)
レイチェル・マシューズ(ダニエル・ボーズマン役)
ルビー・モディーン(ロリ・シュペングラー役)
映画の内容
本作は「ホラー・コメディ」という分類の映画です。
コメディとついているだけあって、ホラーの部分は抑えめですね。
怖いのが苦手な人でも見れると思います。
なんならホラー3:コメディ7 ぐらいの配分かも?
ただし、驚かす系の演出が多いのでそこには注意。
物語は不愛想で思いやりに欠けた遊び人の主人公(ツリー)が、自分の
誕生日に赤ん坊のマスクをかぶった殺人鬼に殺されるところから動きます。
殺されて物語が動くんです。殺されて終わりじゃないんです。
この作品はいわゆるループもので、主人公のツリーは自分が殺される誕生日を何度も、何度も繰り返します。
死のループから抜け出すため殺人鬼の正体を掴んで返り討ちにしてやろう
というのがこの映画のゴール地点ですね。
「誰がツリーを殺したのか」を予想するミステリー要素もありますし
「自堕落な主人公がタイムループをする度に前回のループよりも成長する」
というループものの面白みもしっかり味わえます。
「ツリーが信頼できるパートナーに出会って心からの恋をする」という過程も描かれるので恋愛要素もありますね。
ホラー要素もあるっちゃあるんですが、そこはハッキリ言って薄味なので
あまり期待しない方がいいかもしれません。
「タイムループのたびに成長」
「傲慢な人間が改心する」
「バリエーション豊かな死にっぷり」
といったワードに反応するならホラーが苦手な人にもおすすめしたい映画
です。
感想
この映画は止まった時間に焦点を当てた作品ですよね。
物理的に時間が進まない(タイムループ) と
精神的に時間が進まない(とある出来ことがきっかけで堕落した日々を送るツリー) の2点が同時に描かれていたんだと思います。
で、主人公のツリーはタイムループから抜ける解決策を得るため、現在の
自分の生活と向き合い始めるんですけど、その中で「友人への思いやり」や「家族への愛」といった置き去りにしてきたものを取り戻します。
特に、自らの生活の荒れっぷりに自己嫌悪を起こしたツリーがふと漏らした
「何度も同じ日を繰り返すと本当の自分が見えてくる」という言葉は彼女の心境の変化を表していました。
なぜ傲慢だったツリーがこうも心変わりできたかといえば「自分を殺す動機を持つ人のリストアップ」の作業が大きかったのかなと、私は思います。
これは殺人鬼の正体のヒントを得るために始めた作業なんですけど、かなり精神的にきついことです。
だって「自分がいかに人に憎まれることをしてきたか」と向き合わないと
いけないんですから。
でも、そういった辛いことを直視したからこそ、彼女は時間を進めることができたのでしょうね。えらいぞツリー!
ツリー以外の人物について語ると、パートナー役のニックは本当に好青年
でした。
パーティーで酔いつぶれたツリーに手を出さず介抱し、タイムループした
とかいう現実離れしたツリーの言葉にも真摯に耳を貸す。
こいつはめちゃくちゃモテたに違いない。
だけど最後のあのドッキリは絶対やっちゃダメなやつだろ!
ドッキリのセンスがやや不味いニックは、バースデーケーキのロウソクを消すツリーに「何をお願いした?」と質問します。
それに対してツリーが「明日」と答えるシーンは象徴的です。
普通、意識しなくても勝手に訪れる「明日」をわざわざ欲しがるというのは何度も同じ日を繰り返して、自分と向き合い止まった時間から抜け出した
ツリーだからこその名回答ですよね。
明日というのはただ時間が経つことを言うのだろうか?
それとも昨日より成長できた瞬間に明日が来るのだろうか?
そんな哲学的な問いも含まれている気がします。
この映画のツリーに対する描写も「堕落した人間を叱咤する」のではなく「前に進む人に寄り添う」といった姿勢で、やさしく人間の成長を描く名作でした。
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