「WASEDA LINKS Vol.36 選ぶ」セルフライナーノーツ① 「選ぶ」のコンセプト編
もう1ヶ月も前の話ですが、4月2日にフリーペーパーを発行しました。僕の所属している「早稲田リンクス」というサークルの活動の一環です。
もともとこのサークルは、 90年代に「早すぎたWebメディア」みたいな感じで生まれてそれこそOBにメルカリの創業者である山田進太朗もいたぐらいなんですが、いろいろあって今のメインの活動媒体はフリーペーパーになってます。
春、秋に5000部ずつ。毎回テーマが異なる雑誌を発行しています。
そこで編集長をやらせていただいてるわけなのですが、僕がテーマに設定したのは「選ぶ」です。
僕が2017年にぼんやりと考えていたことが「選ぶ」ことでした。
大学生になって、自分で選べることが増えたことが多分始まりです。
全て自分が決定できる、という楽しみが増えた反面、なんとなく人の選択に流されてしまったり、「あのときああしていれば」みたいな公開をしてみたり、そんな繰り返しでした。
そんなことを考えていた2017年。2月に小沢健二のシングル「流動体について」をリリースされ、その2か月後には「ララランド」が公開されました。
オザケンは「もしも間違いに気がつくことがなかったのなら/並行する世界の僕は/どこらへんに暮らしてるのかな」と歌っていました。
ララランドの二人もラストシーンのジャズバーで、見つめ合いながら「あったかもしれない二人」を想像しています。
オザケンも「ララランド」も自ら選択をしている。そしてなおかつ、その選択に一抹の後悔があろうとも、受け入れている。
それをフリーペーパーで表現できたら?
そう思いついたのが2017年の4月です。そこから、様々な要素が入り混じって、2017年12月に一つの企画として完成しました。
以下、企画の立案時の企画概要の抜粋です。
私たちは何かを選択しながら生きる。
それは人生の岐路を変える大きな選択、例えば、受験や就活、みたいなものだけではない。
何を食べるか、何を着るか、どこに行くか。これも立派な、選択である。けれども、こういった選択はなんとなく、何気なく行われる。
これは当たり前の羅列だ。けど、能動的にした選択はどれだけあるのだろうか。
これも純然たる事実だが、今は情報が溢れている。
毎日届くLINE NEWS、惰性で見るTwitterのタイムライン、「これ本当に自分におすすめしてる?」と疑いたくなるAmazonのおすすめリスト。
情報があふれすぎると、選ぶことが億劫になる。
選択肢や情報が溢れると「なんとなく」とか「とりあえず」という感情を基に何かを選んでしまうからだ。
「なんとなく無難だから」、「一般的な選択だから」、「おすすめリストにあったから」。そのような選択は果たして正しいのか。あるいは自分で正しいと言い聞かせていないのか。
「誰かがした大きな選択」や「日常の何気ない選択」にフォーカスを当てることによって、ついて考え直すことは可能なのではないだろうか。
オザケンと「ララランド」からこんな仮説が生まれました。
実際に文字化すると、普遍的に過ぎて難しいテーマなのではないかということに気づきました。
逆に身近なテーマであり、昔から考え続けられているからこそ難しい。そういうことを承知でこのフリーペーパーを作り始めました。
結果的に、様々な形の「選ぶ」ことがこの雑誌には詰まっています。
「離郷」、「夢」、「職業」みたいな人生の大きな選択や、「ジェンダー」のような社会的な問いの視点からの選択。あるいは、本を選ぶことや、今日はなにを食べるのか?という日常的なことも含めて、一冊の雑誌で問い直すことができた気がします。
目次抜粋
1.「己の道を拓け」 映画監督 小林勇貴さん
自主制作映画で各地の映画祭の賞レースを総ナメにし、商業映画デビュー作品「全員死刑」が海外でも話題を呼んでいる気鋭の映画監督、小林勇貴さんに「自ら道を切り開き、選び取る術」を学ぶ。
2.「逡巡の末に」 現日本テレビアナウンサー 市來玲奈さん
元乃木坂46、早稲田大学生、女優、社交ダンス強化指定選手など、様々な顔を持つ市來玲奈さん。自分のやりたいことをその時々で勇気を持って選ぶにはどうすればいいのか、ということをお訊きした。
3.「『当たり前』に縛られない」NPO法人「ReBit」代表 藥師実芳さん
近年注目され始めたLGBTの問題。しかし、正しい認知が行われていないためにまだ「自分らしい生き方」を選びとれていない人も多い。「自分らしい生き方」を選ぶためのヒントを、ジェンダーとセクシュアリティーの教育活動を行ってる藥師さんに伺った。
4.「直感で選ぶ」 選書家 幅允孝
なんとなく「オススメ」されたものを選んでしまう現代人。本当に自分の手で、自分の楽しむものを選び取れるようになるためにはどうしたらいいのか。本屋を作り上げるプロの選書家、幅さんに話を伺った。
5.「美味しい匂いのする方へ」ルポルタージュ記事
知らない町に行っても馴染みのチェーン店や、食べログの評価によって店を選んでしまう私たち。他人の評価や評判をシャットアウトして、自分の嗅覚だけでお店を選んでみるのはどうか。そんなことを実践し、提案してみた記事です。
6.「今、雑誌を作ること」 EYESCREAM編集長 田口隆史郎
2010年代に入り訪れた、ネットメディアの時代。それに反比例するように雑誌の売上は激減している。その中でメディアとしての雑誌はどうあるべきか。意欲的な誌面作りや、増刊を展開しているスペース・シャワー・ネットワークの出版部、田口隆史郎さんにお話を伺った。
インタビュー5本、コラム1本。全36ページです。
ちなみに表紙は、海辺を歩くモチーフと黄色い服。「流動体について」ミーツ「ララランド」です。
さて、雑誌という媒体を用いて表現するにあたって、何をしたのか?というのはまた次の機会に書きたいと思います。
ぜひ、皆様お手にとって読んでください。
来週、早稲田大学の戸山キャンパスで昼から夕方まで毎日配ります。
遠方の方は送付もしているのでこちらをどうぞ。
https://docs.google.com/forms/d/1-eyzVUndClYkRAHn2gudfRaWgKLkwVgCAtbA20FNDmA/edit