読書記録 | ボルヘスの「ハーバート・クエインの作品の検討」という崇高さすら感じる奇作
あるYOUTUBEチャンネル拝聴時の紹介により、ボルヘスの「伝奇集」を買い求めたのが、つい先月のことである。
なぜ今までボルヘスという小説家の名前は知っていながら作品を求めて来なかったかというと、答えは単純で、「伝奇集」の表紙画にイマイチ興味を唆られなかったからである。
ではまた一方で、なぜ「伝奇集」を買い求めるまでに至ったかというと、こちらも単純で前述のYOUTUBE上の作品解説に唆られたからである。
「この人が面白いと言っている」という効果は存外大きいものである。
このパターンで買い求めた作品が最近において多々あるのは正直なところである。
では何が面白そうに感じたかというと、小説という枠に捕らわれない自由な発想で書かれた作品の特異性にである。
勿論その特異さ故の難解さもあることは承知の上で、蔵書にしておかない手はないと思い立ったところである。
それで満を持しページを開いたのが、つい先日のお盆休みの最中ということで、まずは手始めに紹介でもあった「ハーバート・クエインの作品の検討」という作品を拝読してみたのである。
この小編は出だしからの取っ付きにくさはあるものの、内容は至極純粋で、作者自身が創り出した架空の小説家ハーバート・クエインの架空の作品群を作者自身が作中で批評するといった何とも風変わりな形式を持っている。
おまけにそのクエインの小説から着想を得て、自分自身のある短編を創作したというのだから、また一層風変わりで、実際「伝奇集」の中にその短編作品が収められている。
まだまだ奇作が収められているであろう「伝奇集」、次回の拝読が愉しみなところである。