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アンブレラかレバレッジか?ブランド戦略の選び方

ブランドアンブレラ戦略は、多様な製品を一つのブランドの下にまとめて展開する手法として知られています。それによって新製品の市場導入コストをあまりかけず、かつ認知されているブランド名を冠することで新製品の成功率を高めるのが目的ですね。しかし、一見するとアンブレラ戦略に見える取り組みが、必ずしも本来のアンブレラ効果を発揮できるわけではないケースもあります。さらに、アンブレラ効果がなくても別の形で成功を収めることがあります。

サントリーのザ・プレミアムモルツ(プレモル)は興味深い事例です。マザーブランドであるモルツ自体は長い歴史と一定のブランド認知を持ちながら、なかなか飛躍することができませんでした。しかし、そのブランドの下で新たに展開されたプレモルは大きな成功を収めました。興味深いのは、その成功がモルツだからというわけでもなく、プレモルの成功が逆流して直接的にモルツ全体のブランド活性化に繋がったわけでもなさそうだということです。実際には、プレモル自体が独立したブランド価値を築いたことが成功の理由です。これはアンブレラ戦略に見えるものの、「実はブランド・レバレッジだった」と言えそうです。つまり、このケースの面白さは、アンブレラ効果が必ずしもブランド全体のシナジーを生むとは限らないけれど、時には結果的にレバレッジ戦略として成立することを示唆しています。

もちろん、意図的にアンブレラ戦略を取り成功したケースもあります。レゴとレゴテクニックの事例は、アンブレラ戦略がうまく機能した好例でしょう。レゴは子供向け知育玩具から始まりましたが、レゴテクニックという、時には大人を対象とした高度な機能性を持つラインアップを展開することで成功しました。そこにはレゴが本来持つ「創造性と挑戦」という一貫したブランドコンセプトがベースにあります。両者は異なるターゲット層を持ちながらも、共通の価値観でつながっており、これがブランド全体の強化につながっています。このように、各製品ラインがブランド全体のビジョンを体現していることで、ターゲット顧客が異なっていてもアンブレラ戦略の効果が最大化されることもあるのです。

レゴのケースのように、アンブレラ戦略がうまくいくためには、製品がブランド全体のビジョンを体現していることが重要です。異なる製品ラインでも、根底に共通の価値観があり、それが消費者にしっかり伝わることで、アンブレラの効果が最大化されます。一方で、プレモルのケースのように、ブランド・レバレッジが効果を発揮する場合もあります。ここでは、マザーブランドの信頼性を基にしつつ、新製品が独立した価値を築くことがポイントです。プレモルはモルツの名前を活かしながらも、プレミアムな特別感で新たな魅力を打ち出しました。つまり、成功するためには、ブランドの持つ強みと新製品の魅力をどう融合させるかがカギです。もし前者が強ければアンブレラ、後者が強ければレバレッジとしての効果が出るようです。