見出し画像

セブン&アイ・ホールディングスがそごう・西武を売却する方向で最終調整に入りましたね。ただ具体的な売却先はまだ決まっておらず、複数の投資ファンドや事業会社が候補になるようです。百貨店事業を切り離し、今後は海外とコンビニ事業に経営資源を集中させることになります。百貨店の苦境は今に始まったことではなく、もちろんコロナ以前からずっと言われてきたことでした。セブン&アイ・ホールディングスがそごう・西武を傘下に収めたのも、百貨店のブランド資産を使いながら「新たな百貨店」の道を探る一環だったと思います。そごう・西武に限らず、三越伊勢丹、Jフロントリテイリング、エイチ・ツー・オーも同様に百貨店の今後を占う試みだと思います。

僕にとっては隔世の感があります。僕が大学を卒業した頃、百貨店は元気で就職希望者もたくさんいたものです。当時、西武は鉄道と百貨店事業で世界的な時価総額ランキングもトップ10に入るほどでした。事実、よく一緒に飲み歩いたゼミの先輩もパルコに入社し百貨店の仕事や企画の面白さを語ってくれました。そう、パルコを筆頭に西武百貨店とはそういう企業でした。糸井重里さんの「おいしい生活」というコピーに象徴されるように、大衆文化の最先端というか、ファッションやアートの「民主化」に大きな魅力があった。三越や大丸のような老舗とは違う「親しみやすさ」と「おしゃれ感」が人びとを惹きつけたのだと思います。

しかしバブル崩壊によって経営が悪化。これがそごうとの経営統合や後々のセブン&アイ・ホールディングスによる経営に繋がります。バブルのみならず、消費者の価値観が変わったのも原因だと言えます。例えば百貨店で高価なシャツを買わずとも、ユニクロやスーツカンパニーで充分だというように、あまり背伸びをしなくなった。ネット通販が盛況になれば、尚更、買い物は効率的になった。それでも逆に地下食品売り場は盛況で、いまや百貨店の一番の集客力です。比較的手頃な価格で豪華なお惣菜をテイクアウトできる便利さ。これも今の生活者の意識が買い物行動に現れていると思います。しかしそのようなことを天秤にかけても百貨店事業の難しさを乗り越えられないのが今回の売却なのでしょう。