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ローカル局と日本の貧困

『ラストチャンスかも。地方放送局改革、コロナが促す(日経新聞9月20日)』という記事を読みました。難視聴世帯の解消、特に離島や山間部に設置された中継局の共有の内容です。こうした中継局は全国で9700ほどあるらしく、数千世帯をカバーしているといいます。中継局共有の必要からも、多くのローカル局が経営難にあり基盤強化が求められていると伺い知れます。というのも、これまでローカル局はキー局からの番組をそのまま流すだけで収益を得られる構造になっていました。しかも番組スポンサーはキー局が一緒に連れてきてくれることもあり、ローカル局自身が営業を行う必要もありません。これでは経営が良くなるわけがない。しかし昨今のテレビ業界はインターネットや動画配信サービスなどの影響で、キー局自体が力をなくしています。今後、どうやって生き残るかはローカル局にとって難しい課題だと思います。

ただ今のようなローカル局であれば、なぜ残らなければならないかの理由が良くわかりません。コンテンツ力もなく、キー局との差別性もなければ、地域住民にとっての存在意義もはっきりしない。それでは生き残りのために生き残っても、遅かれ早かれ破綻するでしょう。ローカル局が今後、生き残り、持続的な成長を描くには「役割の再定義」が必要だと思います。ローカル局ならではの立ち位置、必要とする人に必要な「メディアとしての役割」を果たすことで初めて地域から存在価値を認められるのではないか。おそらくこんな議論も昔から局内ではしてきたのだろうと推察します。しかし「本気で問題に取り組む」という覚悟や危機感が欠けていたのではないかと思います。

僕が視聴者としてローカル局に望む役割は、例えば「地域の貧困問題の一助になること」。いま日本の貧困問題は深刻です。そこには若者の貧困、女性の貧困、シングルマザーの貧困、中高年フリーターの貧困、介護による貧困、独り老人の貧困など、僕たちには見えないところで悲惨な話が溢れています。そういう事実は知られていないことが多い。それらの多くは彼らの努力で解決できるものではなく、あきらかに地域とのつながりや国の支援が必要なものが多い。菅首相は首相就任時に「自助・共助・公助」を挙げましたが、これら貧困の根本には「地域社会とのつながりが薄い」ことが大きく関係します。それをローカル局(テレビ局)の情報収集力・編集力、情報発信力で解決できないか。地方では産業も仕事もないなかで、それでも共助の手段としてローカル局の役割を見直せないか。そんなローカル局があれば応援したいと思います。

【この国の貧困に関する参考文献】
『無理ゲー社会(橘玲著/小学館新書)』
『東京貧困女子(中村淳彦著/東洋経済)』
『介護殺人・追い詰められた家族の告白(毎日新聞大阪社会部取材班/新潮文庫)』
『アンダークラス(橋本健二著/ちくま新書)』