2020年の夏を思う

今年の夏は短い
潤滑油が切れた自転車をうるさく鳴らして走る
遠くに行くことも難しいし
実家への帰省も叶わなそうだ
その現実は僕にとってけっこう重たい

朝と夜に見かける
アルミ缶を集める自転車の人を一瞥した
工場地帯のある街
生活は誰にでもあるけれど
思うようにはならない

特に今年の夏は短い
今年初めて行ったスタジアムはディスタンスが測られた
試合は相手チームにノーヒットノーランを食らった
汗だくになったTシャツ
なんていう確率

そして僕はいつものように仕事へ行く
外に出ただけでTシャツは汗で濡れる
マスクを外したくなるけれど
同調圧力を感じて息が苦しい
特別な夏とは言うけれど何が特別な夏なのか

行きつけの銭湯の
水風呂の冷却装置が故障して
温水プールのような温度の中で
「ぬるいねー」と言いながらのんびり浸かり
再び熱いサウナに戻っていく

遠くの国の美しい海が
タンカーの衝突で重油が流れ出して汚されたというニュースを見る
いろんなことをあきらめて
いろんなことがかなわなくて
いろんなことに翻弄されていく

休めるはずの公園も
休めるはずの人たちが排除され
ハイブランドが建ち並ぶ
センスのない言葉の羅列に
「この街も堕ちたな」とつぶやく

今年の夏は短い分
記憶に残ることはとても多い
ゲリラ豪雨の後の
空気が洗われた空を見上げたら
鮮やかな虹が長く延びていた

どんなに時が経っても
戦争がないことだけが平和ではないことを
夏が来るたびに思い出すのではなく
いつも心に留めておいてほしい
歴史など変えられない

いつものようにデマに踊らされ
政治に期待しても明後日の方向で
声を上げにくくデモもしづらい
それでも声は上げていく
これだけはいつもと変わらない夏

そしてありもしないものや起こりもしないことを
ストローマンを使って言い張り
自分が見て知った世界が一番正しいと言わんばかりに
いつまでも差別や排除を繰り返す
そんな奴らが再び目立ってきた

いつまで闘わなくちゃいけない
黒く塗り潰されたページに嘆き
話を聴いている「ふり」だけされて
コピーアンドペーストでなんでも済ませようとしている
人の命とともにどれだけ夏が通り過ぎたのか

「謝るのはイヤだ」と嫌がらせをするような人間に
処罰のひとつもしていないような人間が上に立ってしまう
人を蔑んでもどうとも思わない国で
声を上げた人間の口を塞ぐことを平気で行う
そして繰り返される地獄を飽きるほど見ている

恐れないことは大事だ
最後まで闘うことも大事だ
民主主義が奪われていく
すぐ近くにある場所での出来事は
もうすでに自分の住む国にも起こっている

フジファブリックの『若者のすべて』が流れ始めると夏の終わりが近い
最後の花火を見ぬままに街はだんだん涼しくなっていく
そろそろ長袖を出さなくちゃな
パンケーキを食べるより美味しいコーヒーが飲みたい
僕は感じたことを忘れないようにノートに言葉を綴っていく

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