ビジュアルノベルのゲーム性とは【物語を読むだけで楽しめる、ゲームとしてのビジュアルノベル】
あいさつ
こんにちは、トナカイウサギソフトウェア代表・広川なつきです。
無料インディーゲームを作ってます。
この記事は作っちゃうおじさん様のとてもたのしいたのしい「ゲーム制作者が自由な記事を作るアドベントカレンダー2024」参加記事です!
クリスマスといえばトナカイ!
シャンシャンシャンシャン……
本題
ゲーム制作をしているとよく見かける話題のひとつに「ゲームの定義」の話があります。そもそもゲームって何?という話。特に個人制作ゲームみたいな、自由に色々な発想で作られたゲームが集まる場所ではよく出てくる話題。
作者にとっても、自分が作っているものはゲームと呼べるのかどうか疑問に思うことがあるのは分かるし、プレイヤーとしても斬新なゲームを遊んだ時に「これはゲームなんだろうか……」と思うのも分かる。ゲームかどうか際どいものをゲームコンテストに応募して良いのかどうかということも話題になったりする。たとえば、ゲームというよりはほとんど小説に近いようなビジュアルノベルとか。
自分の中ではこれはもう結論が出ていて「ルールが存在するもの、そしてそのルールを楽しむものがゲーム」と考えてます。
ちなみに「勝敗が存在するものがゲーム」という考え方もあるけど、確かに「ルールによって勝敗を決すること」を楽しむものであればその通りだと思う。ただ勝敗を決することだけがルールではない、ということ。
ところでこれは個人的なこだわりの話だけど「見るだけのゲーム」とか「読むだけのゲーム」という考え方があまり好きではないです(!!)「ストーリーを楽しむだけのゲームだからゲーム性は無いよ」みたいなやつのことね。
なぜならゲームには必ずゲーム性があるべきだと考えているからです。つまりゲームにはルールが存在しているべき、ということ。ゲーム性(ルール)が無いものをゲームと呼ぶことには個人的には反対であると言ってしまってもいいかもしれません。
前置きが長くなったけど、今回言いたいことは「ストーリーを楽しむことに主眼を置いたビジュアルノベル作品にもルールを楽しむという要素が無ければならない(と個人的には思う)」ということ。
では一般的にノベルゲームにあるべきルール(ゲーム性)とは何なのか。
まず結論を書いてしまいます。
ノベルゲームにあるべきルールとは……
「決定キーを押すと次の文章に進むこと」
です!
いや、それは“ルール”というよりは“操作説明”の範囲では?という意見もあると思います。
でも考えてみると「決定キーを押すと次の文章に進むこと」は、ゲームをやり慣れた人が思うほど当たり前のことではない。
よくある意見として、ストーリー性しかないノベルゲームを作るくらいなら小説にしたほうがいいのでは?という意見もあるわけだけど……じゃあ例えば小説を読んでいて、本のページをめくると次のページに行くのは当たり前のこと。それに対して、ノベルゲームで決定キーを押すと次に進むのは必ずしも当たり前ではないと思う。
本来は、決定キーを押すと次に進む、というのもゲームデザイナーが決めたルールの一部であるはずなんだよね。決定キーを押しても先に進まないという設計にもできなくはないわけだから。そして、決定キーを押して進めていくというルールに従って楽しんでいる以上は、これだけでもノベルゲームはゲームだということになる。ゲーム性が限りなく低いとは言えるけど、ゲーム性が無いわけではない。
ゲームが小説などの物語メディアと違うのは、進むためのルールがあるということ。
ドラゴンクエストみたいなRPGをやり慣れてると、文章が表示されたら決定キーで次に送る、みたいなことは当たり前の基礎部分すぎてこのあたりに対する感覚は鈍くなっている気がする。
でも実は当たり前のことではないということを意識してみてほしい。
もっと根本的な話をすると、要するに「どうしたら先に進むのか、どうしたらクリアできるのか」がゲームにおけるルールなのではないかと思う。
だからノベルゲームにおいては「決定キーを押すと文章が進んで、最後まで読めばクリア」というのもルールのうち。
じゃあルールに関してはそれで良いとして「ルールを楽しむ」という部分はどうなるのか。それはゲーム制作者のみなさんがそれぞれ考えてください(丸投げ)やっぱり個々の制作者さんがしっかり考えた面白さを味わってみたいですからね!
ただひとつ言えるのは、実際のところ、ボタンを押すと先に進むという部分だけでもゲームって結構面白いと思うんだよね。インタラクティブ性というものはそれだけでなんか嬉しい。
「ただ単に特定のことをすると特定の反応が返ってくる」というインタラクションがあるだけではゲームとは呼べないのでは、と言う人もいます。しかしその「特定のことをすると特定の反応が返ってくる」というのはまさに”ルール”であり、そのことを楽しめるならそれはゲームと呼んでもいい。このボタンを押すと進むんだ、っていうルールを見つけることをゲームとして楽しみたい。
“ゲームの定義”の話に戻るけど「プレイヤーが操作する要素があればゲームである」という意見も見たことがある。例えば映画であれば観客は内容に干渉できないわけで、プレイヤーが何かしら働きかける要素があるならゲームだという考え方。
これは「ゲームのゲームらしさとは何か」に注目した考え方なのだと思う。その説を提言した方の意図としては「別にルールとか無くてもキャラクターを動かせればゲームなんだよ」ということだったらしいのだけど、確かにキャラクターを動かしてるだけでもゲームをしているという感じはあるよね。
でもそれだけだと、ゲームっぽい感じがする、というだけで考えが止まっている気はする。じゃあキャラクターを動かすだけのゲームはゲームではないのかというとそんなことはなくて、たとえばそのキャラクターが特定の地点まで移動するとイベントが起こる、というのもひとつのルールだし。考え方の問題だけど、考え方って大事。
ビジュアルノベルをプレイしていてたまに思うことがあって、それは、無理にエンディング分岐とかを作らなくてもいいんだよということ。
たぶん制作者の方としては、絵と文章が表示されるだけのビジュアルノベルはゲームと呼べるのだろうか?という迷いがあって「これはゲームなんですよ」というアリバイ作りのために分岐を入れているというパターンもある気がする。
でも単純な分岐ってルールとしてそれほど面白くないと思う。もちろん推理要素とか戦略的な要素が入っていればゲーム性は上がるし、そうでなくても分岐があることで物語として面白くなる場合はあるから、分岐を入れてはいけないというわけではないのだけど。
ただ、たとえば選択肢Aを選ぶとエンディングAに行く、みたいなあまりにシンプルなものはルールとしての面白さの増強にはほとんどなっていない、と個人的には感じる。だから「何かしらゲーム性を入れないと!」という義務感みたいなものだけで選択肢分岐は入れなくてもいいよ、と思う。
ということで、みなさまもビジュアルノベルをゲーム作品としてどんどん作って発表しましょう~
一般的にゲーム的とされる要素を無批判に追加するのではなく、ルールを楽しむこととは何なのかを自分で十分に考えて練った上で作ることが大切。その部分をしっかり考えて作られていれば、ただ物語を読むだけのビジュアルノベルでも「ゲームとして」他のゲームに劣るものではないというのが自分の考えです。
実践編(自作品紹介)
最後に実践編として(?)、実際にこの考え方を踏まえて制作した自作ビジュアルノベル作品を紹介します。
境界に立つ
https://whiteophidion.sakuraweb.com/software/border/
制作ツール:RPGツクールMZ
3分ほどで遊べるゲームを作るコンテスト「3分ゲーコンテスト」の参加作品です。
元々自分は選択肢分岐を作るタイプではないけど、この作品では特に、分岐が無いということを意識して作りました。
3分ゲーコンテストのルール的には「1プレイ3分ほどで、何度も繰り返しプレイできる」ゲームをエントリーすることは問題ありません。でもたとえば「1プレイ3分で複数の種類のエンディングを見ると真のエンディングが見れる」というゲームにしてしまうと複数回クリアが必要になるので、実質的には1回のプレイ体験が3分を超えてしまう。個人的にはこれが納得いかないので、必ず1プレイで終わるものにしようということがテーマでした。
ただ、それと同時に何度も繰り返し遊べるものにしようというテーマもあります。プレイヤーが自主的にもう一度遊ぼうと考える分には問題無いということ。「何度も繰り返す必要がある」ではなく「何度も繰り返して遊べる」ゲーム。そういう意味で繰り返しプレイを推奨するものは3分ゲーコンテスト参加作品のアクションゲームではよくあるけど、ノベルゲームでそれを目指しました。
物語的にも主人公が過去のことを思い返しているという形式になっていて、繰り返し遊ぶことは「同じ思い出を何度も思い返す」という体験となります。過去のことだから繰り返しプレイしても展開は変わらない、という意味付けもあります。
メリデアナ
https://whiteophidion.sakuraweb.com/software/meridiana/
制作ツール:RPGツクールVX
ノベルゲームなのにキー操作でキャラクターを動かすパートがあるというゲーム。でもあくまでアドベンチャーやアクションではなく、ノベルであるというバランスを取ることを意識しました。
これ以上はノベルゲームとしては雑味になってしまうという、だいぶぎりぎりのところを攻めてます。
それでもノベルである意味や操作パートの意味などを考えたり味わったりしながらプレイしてみてほしいです。
海に至る道
https://whiteophidion.sakuraweb.com/cross/soleil/
制作ツール:RPGツクールMZ
「文章を読み進めることのルール化」という点では新しい実験に取りかかったノベル作品です。文字をクリックして進めるというプレイに、より強い意味付けをしようと試みました。まだ実験段階で固まっていない感じなので今後に活かしていきたいところ。
とはいえ、あまり工夫して難しいルールを入れて、たとえばアドベンチャーゲームのように頭を使わないと解けなくなってしまっても意図とずれるので、そういう意味ではこのくらいのバランスでよかった部分もあるのかも。
自分の好みとしては、ノベルゲームは難しいことを考えずにただ読むだけで楽しめるものにしたいという思いがあります。漠然とクリックするだけで誰でも楽しめるという。でも同時に、少しだけ考えながら読み進めることもできるものにもしてみたい、と考えながら作りました。
おわりに
じっくり攻略するゲームも良いけど、何も考えずにクリックだけで楽しめるゲームも良いですよね!
あとクリスマスも楽しいです。みなさんもクリスマスケーキのご用意は忘れずに~クリスマスケーキを食べながらゲームしようね!