なんでもできる人と、自分を比べない。 まずは、今の自分にできることを突き詰める。
blueでエンジニアを務める高嶋 淳さん。お客様と"話せる"エンジニアとして、プロジェクトを引っ張っていってくれている、頼もしいメンバーです。
天性のエンジニアと、仕事として完遂させる職業エンジニア。
吉永:
高嶋さんがうちに入社してくれたのは今年の9月、本当につい最近ですね。(このインタビューは2021年9月下旬に行いました)
高嶋:
はい。前職でもエンジニアだったんですけど、だんだんとディレクションもするようになって。このままだとどっちつかずになるなぁと。自分のスキルをもっとストレートに活かしたいと思って、blueが頭に浮かんだんです。
吉永:
開発に長けたエンジニアさんって、なんとなく喋らない人が多い気がしてて、だからこそ、高嶋さんみたいにお客様と喋って案件を進められる人は貴重なんですよね。高嶋さん、「いいWebエンジニアってなんだろう」っていう対談テーマを聞いたとき、どう思いました?
高嶋:
前職も含めて、これまで本当にいろんなタイプのエンジニアを見てきたので…。「こんな人」って一概には言えないかもしれないな、と思いました。
吉永:
たしかに、高嶋さんは前の職場のチームでもたくさんのエンジニアと一緒に仕事をしてきたでしょうし、発注先のエンジニアとも関わってますもんね。
高嶋:
いいエンジニアと聞いてまず思い浮かぶのは、前の会社にいたエンジニアリングのヒーローですね。高校生の頃からプログラミングしてたくらい、つくることが好きな人でした。iPhoneが登場したときに、社内で手始めに暗算アプリをつくってみようという話が出たことがあったんです。同期のその人は、PHP以外の言語は趣味でしてきたくらいのイメージだったのですが、英語のドキュメント見つつ黙々と作業してて。それで完成したものが、無料アプリランキングのトップに数年間も君臨したんです。
吉永:
ものをつくることへの興味とか情熱で、自分からどんどんつくっちゃう人だったんですね。エンジニアが天職みたいな。
高嶋:
そういう人って、ほっといても何かつくるし、新しいことを取り入れてくるんです。職業というより趣味みたいな感じ。課題があればなんでも自分で調べて、喋れなくてもブレストでいいものを当ててきたりとか。間違いなくいいエンジニアです。でも一方で、趣味じゃなく、仕事としてエンジニアを選んだ「職業エンジニア」みたいな人もたくさんいると思うんです。
吉永:
高嶋さんはどちらですか?
高嶋:
自分は子どもの頃からプログラムを書いてたわけではなく、27歳で学び直してこの仕事に就いたので、典型的な職業エンジニアです。で、そういう職業エンジニア的な人たちのなかにも「いいエンジニア」っていると思っていて。その人たちに共通してるなと感じるのは、最後まで自分の仕事に責任を持つことですね。「わかんないです」で終わりにしない人。趣味で突き詰める人じゃなくても、求められるレベルに応えようというスタンスを持ってる人はいいエンジニアだなって思います。
吉永:
つくることが好きで自分からどんどんやってしまう人と、職業として、責任を持ってしっかりやりきる人。たしかに、どっちもいいエンジニアですね。
熱量を注げば注ぐほど、仕事にワクワクできる。
高嶋:
趣味でやってる人はすごい熱量高いんですよね。家帰ってもやってるし、新しい技術を取り入れることにも積極的だし。でも、職業エンジニアみたいな人も、案件が始まったとき、関わったときに熱量を上げられるかどうかは、すごく重要かなと思います。
吉永:
どんなタイプのエンジニアにも、熱量は必要ですか。
高嶋:
必要ですね。どれだけ経験があるとか、技術力が高いってことだけが、いいエンジニアの基準ではないというか。たとえば、経験が浅くても、自分のできることを頑張って伸ばそうとする人。熱量をもって「こうですか、それともこうですか」っていろんな人に聞きながら仕事する人が職場にいたら、周りの熱量も引き上げられると思います。
吉永:
熱量をもった人って、成長のスピードも早そうですよね。
高嶋:
そうですね。案件ベースでエンジニアがアサインされると、必ずしもその人の経験に沿った仕事じゃない場合もあるんです。でもそれって、使ったことのない技術に触れたりとか、お客様と喋ることとか、全部経験するチャンスでもある。いまできることをベースに考えるんじゃなくて、できないことをできることに変えていくと、めちゃくちゃ成長するんですよ。
吉永:
たしかに、やってみないと自分に向いてるのか、そうでないのかもわからないですよね。
高嶋:
自分も、もともとPHPのエンジニアだったんですけど、Pythonを使う案件にアサインされたことがあって。テクニカルディレクターが最初はついてくれたのですが、同時期に社内でも大きなプロジェクトとの同時進行だったのと、私もまだ入社したばかりで挑戦的な案件を聞きながら実装することに慣れていなくて、なかなか相談できなかったことがあったんです。でもなんとかかたちにしようと、数時間しか寝ないみたいな生活をしながら、「解決」と「次の課題が見つかる」の繰り返しを何度もやってたことがありました。その案件を完遂させたとき、非常に大きいよろこびを感じたんです。
吉永:
けっこうハードな体験をしてきてるんですね。
高嶋:
それまでは、わからないことに直面したらひよってしまうタイプでした。でも耐性がついて、今はもうなんか、ワクワクするようになったんです。それがきっかけで喋ることも億劫にならずに、いろんなことができるようになって、今の自分につながってるのかなって。
吉永:
一回そのモードに入れたら、挑戦することが怖くなくなるし、できることが広がっていきそうですね。
高嶋:
ちなみにその案件は世界の数々の広告賞を受賞して、サービス化の話もあり、特許も取得してます。
吉永:
それは、すごいですね!!
ログに、自分の感情を“絵文字”で乗せるエンジニアがいた。
吉永:
いいエンジニアから学ぶこともあると思うのですが、高嶋さんが学んだことってあったりしますか?
高嶋:
画像加工のソフトウェアをつくっていて、ある人に移行したとき、「この人本当にエンジニアリング好きなんだな」と感じたことがあって。ログの出力を見ると、そこに絵文字が使われてたんです。iPhoneと同じ絵文字。
吉永:
ええ。プログラムに絵文字って使えるものなんですか?
高嶋:
驚きました。コマンドの黒い画面でプログラムを叩いていくんですけど、自分の場合は盤石な感じにしたくて、文字だらけにして書きがちなんですよね。たとえば、
みたいな記述にしてしまう。でもその人は、
こんな感じで、コマンドの型に囚われずに、文字の羅列がダーッと流れてもひと目でなにが起こっているのかわかるようにしてて。これはすごいな、楽しんでやってる人はやっぱり違うなと思いました。
吉永:
面白いですね、自分の気持ちが入ってる。仕事をしてるときに自分もよりテンションが上がるし、見る人にとっても便利な工夫を凝らしてますね。
高嶋:
こういうのはすごく面白いです。エンジニアリングが本当に好きな人のそういう部分に、感動した経験がありますね。
人と比べて足りないものを探すより、今の自分にできることを伸ばす。
高嶋:
最近なんとなく、いろんなところで副業エンジニアの話が多い気がしますね。3ヶ月間スクールに通ってフリーになれました、みたいな話もSNSとかで見るんですが、個人的には、会社に入って経験して、自分のできることに向き合って成長した方がいいんじゃないかなとは思いますけどね。
吉永:
一度はとことん壁にぶつかってみるというか。会社だと、どういう職場環境がいいんですかね。たとえば周りができる人ばっかりだと、なんか焦るじゃないですか。
高嶋:
エンジニアって、みんな自分の知らないことに目が行きがちで、同じチームのできる人と比べると思うんです。この人フロントもできるしサーバーサイドもできるから、自分ももっといろんなことやらなきゃ…みたいな。でも、人と比べるべきじゃないなとは最近感じてて。自分の得意な分野が一つでもあれば戦えると思うんですよね。
吉永:
やらなきゃいけないことがどんどん増えていっちゃうと、自分がもともと得意なことも見えにくくなるのかな。
高嶋:
自分のできないことまで手を出そうとすると、たしかにやることばっかり増えますね。どっちつかずで結局成長しない。各分野に専門のエンジニアって必ずいるから、そこは一旦その人たちに任せて、自分が今できること・好きなことの能力をのばしていく方がいいと思う。自分と会話しながら、前へ進むのが大事だなって思います。まだ数は少ないですが、すでにblueの案件でも色んな方とやりとりさせていただいていて、単体の言語ではなくWordPress、Movable Typeなど特定のサービスやライブラリに特化したエンジニアさんとかもいらっしゃって、それだけ需要があるのを肌で感じています。
無理はせずに、目の前の仕事を成功体験に変える。
吉永:
この先のキャリアどうしようって考えてる、職業エンジニアの人もいると思うんです。そういう人たちがいいエンジニアになるには、どうしたらいいと思いますか?
高嶋:
自分の経験から言うと、成功体験を繰り返すことです。書いたことのない言語だったり、違うレイヤーだったり、無理矢理いろいろ手をつけていくよりも、目の前の仕事に熱量をぶつけて、できないことをできることに変えていく。それを繰り返していくうちに、自分の得意分野だったり、自分の活かし方みたいなものが、見えてくるんじゃないでしょうか。
吉永:
若手のエンジニアさんって、成長するために、いろんな言語ができるようになりたいっていう人が多いんです。でもそうなると、広いかもしれないけど浅くなっちゃって、逆に成長しにくいのかなって感じたことがあります。
高嶋:
一通りできなきゃいけないと思って、焦る気持ちはわかるんですけどね。
吉永:
私もこの業界に入りたての頃、とりあえず一通りやってみようと思って、Adobeのオールインパックみたいなものを買ってみたんですけど。いろいろ手を出そうとして、結局どれもできなかったんですよ。そういうエンジニアさんって結構多そう。
高嶋:
自分のできることを突き詰めてから、その延長線上にある新しいことにも少しずつ挑戦してみるのがいいと思います。そうすれば、できないことができるようになるよろこびを、ずっと感じながら仕事をつづけることができるんじゃないでしょうか。それがプロジェクトや仕事に活用できて自信につながれば、尚良いと思います。
吉永:
焦らずに、目の前の仕事で自分にできることをじっくり見つめてみてもいいかもしれません。
高嶋:
自分が今みたいにお客様と喋れるようになったのも同じようなもので、自分にできることってなんだろうと向き合った結果だったりします。普段は全然喋るタイプじゃないし、元々電話に出るのも嫌だった。ただ、案件を通じて、今ここで発言すれば大きく前進するとか、その場面で背伸びをしてみたら結果的によくなって、それによって自分も大きく成長した感覚になったんです。
吉永:
自分がどうなりたいか、何ができるのかをちゃんと知って、勉強して、チャレンジして、成功体験を繰り返して、自分の武器を見つけていくんですね。
高嶋:
でも、実は今もサーバ側で効率化が必要になったりする時とか、何かの仕組みでプログラム解決したい場合はツールをつくることもありますし、運用中のサーバサイドのサービスも持っています。面白そうな開発だったら入りたいという気持ちもまだあります。1年に開発する件数は、これまでより圧倒的に少なくなりましたが。案件全体を見つつ、私は今も開発を続けています。
わからないなりに、一旦考えてみることも大切。
吉永:
いいエンジニアの共通点って、高嶋さんはなんだと思いますか?
高嶋:
与えられた仕事を最後までやりきることですね。天性のエンジニアも、職業エンジニアも、喋れる・喋れないも関係なく。課題に対して諦めずに向き合ってくれる人には、じゃあこうしてみたら、というフィードバックもしやすいです。「自分ができる範囲でしてみたんですけど」と出してくれたら、それはゼロじゃないので。
吉永:
たしかに、まずは自分なりに導き出した答えを持ってくる人っていいですよね。
高嶋:
そうです。考えもせず、調べもしてない状態で持ってこられると、それ以上前に進まないんですよね。結局、ディレクター側が異なる対策を取るしかなくなってしまったり、クライアントに納得してもらうための説明に変わったりしてしまう。それって非常に残念です。せっかくエンジニアリングするなら最後まで突き詰めていただきたいし、私もエンジニアなので、どんなアイデアでも膨らませるお手伝いは可能です。わからないなりに追求してくれる人は、こちらのアドバイスも踏まえて次のステップにちゃんと進んでくれるので、そんなスタンスの人はいいなって思います。
吉永:
なるほど。熱量をもって仕事に向き合おうとする人は、結果的に、自然に成功体験を重ねていくことができそうですね。
開発者だけで、仕事を完遂させるチームができたら。
吉永:
この先、エンジニアを取り巻く環境はどんなふうに変化すると思いますか?
高嶋:
社外PMやSEとして様々な企業様に携わっていると、社外の力を利用したいってケースが増えてるように感じます。初めて社外に発注するお客様でも、適切な人をアサインすることできちんと成立すると理解してもらえるケースも多いですね。1つの制作会社だけで技術に偏ることもないし、所属が様々なメンバーが集まる事で、より目的に近いチームが実現することも少なくないです。blueは、現に副業やフリーランスも含めたパートナー様で制作開発が成り立っている。人選によっては、お客様は費用が安くなるしエンジニアは希望の収入を実現しやすいし、っていう費用面の良さもあるかと。
ここ数年、副業の許可を出す企業が増えたり、コロナ禍でリモートワークのやり易さが増したこともあって、フリーランスになる人も副業にチャレンジできる機会も増えてきているので、案件ベースで、開発者だけのチームをその時々で作って、希望の収入をエンジニアに常に提供できる環境を、blueでつくっていけたら面白いと思ってます。その部分は、PM、SEで今までやってきた自分の得意分野かと思っています。
吉永:
まさにそれを目指してますね。制作会社の人も、フリーランスも関係なく集まって、それでいいものができたら、お客様に喜んでもらえるじゃないですか。うちがそんな会社になれたら面白いなって思います。しかもひとつのオフィス起点じゃなく、それぞれが自分の好きな場所で動くチーム。
高嶋:
blueがそういう企業として認知されて、案件毎にチームを作って、プロジェクトを作るお手伝いが一般的になれば、エンジニアの働き方はより変わると思っています。所属していると、どうしてもその会社の案件でしか技術を試すことができなかったり、特定の技術だけに偏ることもあるので、会社の枠から案件を通じて外に出て、特化したエンジニアの技術を発揮できる機会を作るのはいい事ですよね。一緒に携わった人が影響を受けたり、場合によっては新人エンジニアの技術向上になって、業界としての技術力も変わっていったら素晴らしいなと思います。
吉永:
自分のキャリアに向き合えて、自分の能力の活かしどころがちゃんとあって、さらなる成功体験を重ねていける。会社というより、そういうプラットフォームみたいな場所をつくっていけたらと思います。