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希死念慮とは?大学生のメンタルヘルスに必要な理解と支援

こんにちは、相談支援専門員で独立を目指すソーシャルワーカーのAoです。
今回は私がキャンパスソーシャルワーカーとして良く直面する希死念慮の対応についてお話していきたいと思います。

大学生にとって大学生活は、多くの新しい体験や挑戦が詰まった重要な時期です。しかし、その反面、慣れない環境や人間関係、学業や就職活動などのプレッシャーもあり、精神的に不安定になることも少なくありません。今回は、大学生に見られる「希死念慮」について理解を深め、その原因や予防、支援の方法について解説します。

希死念慮とは?その原因とリスク要因

希死念慮とは、死にたいと感じる思いや考えを指します。この気持ちはさまざまな理由で生じ、学生生活においても経験する人が少なくありません。以下に、大学生に見られる主な原因とリスク要因を示します。

学業や就職活動のストレス
授業、試験、そして就職活動のプレッシャーは大きなストレス要因です。特に大学の進級や卒業がかかる課題や、就職に直結する実習などは、精神的に重圧を感じやすい場面です。

家庭や友人関係の問題
家族や友人、周囲との関係が上手くいかないことで、孤独感や疎外感を覚えることがあります。大学生になると親元を離れることも多く、家庭からの支援が減る一方で、友情や人間関係の複雑さに悩むこともあります。

恋愛に関する悩み(意外と多い)
恋愛関係における失恋や不安、嫉妬などの感情は、特に思春期後期の大学生にとって大きなストレス源となり得ます。

健康上の問題
身体的な健康問題や慢性的な不調が続くと、精神的にも負担がかかりやすくなります。特に大学生活での不規則な生活習慣やストレスが重なることで、身体の健康だけでなく精神の安定にも影響を与えることがあります。

慢性的な気分の落ち込み
特定の要因に限らず、長期間にわたって気分が沈んでしまうこともあります。こうした慢性的な気分の低下が続くことで、気づかないうちに希死念慮が生まれることがあります。

希死念慮は、必ずしも自殺行動に直結するわけではありませんが、こうした気持ちが繰り返し生じることで、将来的に自殺リスクが高まる可能性があります。そのため、早期発見や適切な支援が非常に重要です。

大学における自殺予防の取り組み

大学というコミュニティ内で、希死念慮を抱える学生を支えるためにどのような対策が取られているのでしょうか。以下は、大学で行われている代表的な自殺予防の取り組みです。

1. 早期発見と支援

質問紙調査の実施
健康診断の際に自記式の質問紙調査を行い、学生のメンタルヘルス状態を把握します。これにより、早期にリスクのある学生を見つけ出し、適切なサポートを提供するきっかけとします。

ハイリスク者への面接
質問紙調査や日常の観察を通じて、特にリスクが高いとされる学生には面接を行い、個別に対応します。話を聴くことで本人の状態を把握し、必要な支援を検討します。

ゲートキーパー研修の充実
教職員や学生自身が希死念慮を早期に発見し、適切に対応できるようにするための研修を行います。これにより、支援者が増えるだけでなく、コミュニティ全体でメンタルヘルスのサポート体制が強化されます。

2. 相談体制の整備

アクセスしやすい相談窓口の設置
学生が気軽に利用できるよう、目立つ場所に相談窓口を設置し、相談のハードルを下げます。

精神科医や臨床心理士との連携
必要に応じて、専門家によるカウンセリングが受けられるような連携体制を整備します。また、保健師や看護師が常駐し、日常的な相談もできる環境を作ります。

電話やメールでの相談受付
対面の相談だけでなく、電話やメールでの相談受付も導入し、匿名での相談や緊急時の相談にも対応します。

3. 啓発活動の推進

オリエンテーションでの情報提供
新入生や在学生に対して、メンタルヘルスの重要性を説明し、相談窓口の存在やサポート体制について周知することで、必要な時にサポートを受けやすくします。

心理教育プログラム
メンタルヘルスに関する理解を深めるため、ワークショップや講義を定期的に実施します。これにより、学生が自己ケアや他者支援のスキルを身につけられるようにします。

啓発資料の配布とピアサポートの活用
心理教育の一環として、学生間の相互支援体制(ピアサポート)を整備し、孤立を防ぐ仕組みを作ります。ピアサポートを通じて、学生同士が支え合える関係を築くことが大切です。

周囲の人ができること:希死念慮を抱える学生への対応

希死念慮を抱える学生に対しては、友人や教職員、家族など周囲の人々の対応が大切です。以下のようなアプローチを心がけましょう。

じっくりと話を聴く
まずは、相手の気持ちに寄り添い、話をじっくりと聴きましょう。話を聴くことは大きなサポートであり、気持ちを少しでも楽にしてあげることができます。

感謝の意を示す
自分に打ち明けてくれたことに対して感謝の気持ちを伝えることも大切です。打ち明けたことへの感謝が伝わることで、相手も自分の気持ちが受け入れられたと感じるでしょう。

具体的な自殺計画の有無を確認する
命の危険があると感じた場合には、具体的な計画があるかどうかを確認することも必要です。

「大丈夫」と安易に言わない
相手が悩みを打ち明けた時に「大丈夫」と軽々しく言わず、しっかりと寄り添い、一緒に解決策を考える姿勢が大切です。

専門家に頼ることも大事
周囲だけで対応が難しい場合は、学内の専門家や相談窓口に相談することをためらわないようにしましょう。


大学生のメンタルヘルスを守るために

希死念慮を抱える学生に対する支援は、大学生活を安全で充実したものにするために欠かせません。大学内のコミュニティ全体でメンタルヘルスに対する理解を深め、早期発見や支援体制の整備、相談窓口の充実、啓発活動の推進、そして周囲の適切な対応を通じて、学生のメンタルヘルスを支え、自殺リスクの低減に努めることが求められます。

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