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上板町「技の館」で藍染め体験

先日、徳島県板野郡上板町にある藍染め体験施設「技の館」さんへ行ってきました。
上板町は、藍染めの原料である蒅(すくも)の生産が盛んな地域で、徳島に引っ越したら行ってみたいと思っていた場所でした。技の館では、藍染め体験の他に、藍染めアイテムが購入できたり、和三盆の資料館が併設されていたりと上板町に根付いた伝統工芸が体験できる施設です。

上板町 技の館

頻繁にイベントも行われており、今回は、藍マルシェというイベントに合わせて伺いました。中に入ると、手作りのアクセサリーのお店やコーヒーショップなどが出店していて家族連れも多く賑わっていました。

藍染め工房のドアを開けてみると、まるで学校の教室のような空間が。家庭科の授業を思い出して懐かしくなりました。スタッフの方に伺うと、小学生などが藍染めの授業で利用することもあるようです。

藍染め体験のお部屋

ハンカチやストール、Tシャツなど施設が用意してくれているものを選ぶこともできるし、持ち込みで染めることもできるそうです。私は事前に予約時に決めていた大判のバンダナを染めることにしました。

「どんな柄にしますか?」と聞かれ、黒板に貼られていたサンプルの中から、「むらくも染め うずまき模様」を選びました。前々からインスタなどで「これはどんなふうに柄を作るんだろう?」と思っていたので、やり方を教えていただきたかったのです。

まずは、スタッフの方に作り方をレクチャーしてもらいました。クッキリと渦巻き模様になるように、力を込めて何回もギュッギュと巻いていきます。反対側の手を添えるようにして、巻いた生地が戻らないようにすること、机に向かって下方向に力を込めることがコツだと教わりました。

むらくも染うずまき模様の作り方

くるくる巻いて出来上がったハンカチは、バラのような可愛らしさ🌹
ネットに入れて、形が崩れないようにするのも、「なるほど!」と思いました。
柄をつけ終わった後は、隣にある染め場へ移動。想像していた以上に天井が高く広々としており、びっくり。

染め場

藍染め体験で使うほか、商品を染めたり、染め依頼を受けたものを染めたりされているのだそう。工房には藍の匂いがほのかに漂っています。写真にある長方形の大きい染め槽を使わせてもらいました。

石鹸ネットにインしたバンダナ生地

藍染め液の中に、手を入れると少しひんやりとしました。液に漬けた後に、外に出して空気に触れさせ酸化させるのを交互に繰り返していくと、だんだんと濃い藍色に染まっていきます。

技の館では、畑で藍を育てて蒅作りから、染めまでの工程を行っているそう。今染めている藍染め液も、スタッフの方が育てた天然の蒅を使ったもの。技の館では、その手作りの蒅に木灰からとった灰汁、ふすま、石灰を混ぜて藍建てを行っていますとお話ししてくださいました。

酸化させている間に、工房内もみて回ることに。長方形の甕の他に、昔ながらの床に埋め込み式の甕もありました。藍染めに使われる藍甕の容量は、280リットルが一般的だそうですが、なぜかこちらの甕は220リットルとやや小さめなのだとか。工房ができた当時に設置されたものらしいですが、どこで購入したものなのか、なぜ微妙にサイズが異なるのかは謎なのだそう。記録が残されていないのも興味深いなと思いました。

床に埋め込まれた藍甕

液内にいる微生物の発酵によって液の濃さや染まり具合が変わるため、注文されたものと藍染めの状態が合わない場合は、「○週間後なら受け付けます」と言って、スケジュールを調整することもあるそう。化学染料は、人間の都合に合わせて仕込むものだけれど、天然染料は人が液の状態に合わせて染めるものや量を調整する。そんなお話を聞いて、全ては藍の状態を中心に世界が回っているのだ、と気づきました。

染めた生地を開く瞬間

何回か染め重ねて、よい感じの藍色になったので、ネットから出して開いて水洗いをします。自分で作った柄が目の前にあらわれる、一番ドキドキの瞬間です。

初めてのうずまき模様

水洗いを繰り返して、しっかりと酸化させたら良い色合いのうずまき模様の出来上がり。初めてでしたがコツを伝授していただいたおかげで、ちゃんとうずまき柄になりました。

中庭では藍マルシェが開かれていました。

技の館には、他に「とくしま上板熱中小学校」という地方創生プロジェクトがあり、調理自習の教室があるなど、まるで学校のよう。社会人になっても、同じ興味を持つ仲間と出会えたり、地元の伝統工芸について学ぶことができる施設があって、素晴らしいなと思いました。

今の時期は、刈り取った蒅の寝込みも行っているそうなので、また伺いたいです。

あとがき

上板町は藍染めが盛んな地域であることから、海外からもお客様がいらっしゃるそう。海外の人は昔からある伝統的なものへのリスペクトがあり、藍染めにも興味を持って話を聞いてくれるとか。それならヨーロッパの方が藍染めが残っていそうなものだけれど、インド藍や化学染料の影響であまり残されていないのだとか(地域にもよると思いますが)。また、日本の人に上板では藍染めが盛んなんですよと伝えても、「へぇ、そうなんですね」といった感じであまり反応されないこともあるそう。若い人にももっと知ってもらいたいし、気軽にできるようになっていってもらいたいともお話しされていた。自分が好きなものの感動を、他の人と共有できないのは寂しいし、魅力が伝わりきっていないような、もどかしさを感じることもあるのかもしれない。人それぞれ考え方は違うけれど、私も同じようにもっと多くの人に知ってもらいたいし、当たり前のように自分の着るものは自分で染めるような文化になっていったら良いのになぁと思っている。
だからこそ、改めて藍染めの魅力を再確認して、価値あるものの伝え方を模索していく必要もあるのではないかと思った。



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