ASDと、逃げの兄 #a1
長男がいます。長女は家庭の都合で何人かいるのですが、長男はおひとりいます。彼は2000年代の産まれなので、もう今や、そこそこ発達しきったのですが、いわゆる発達障害という症状と戦っていたと思います。
そこそこ成人になったお兄さんが、そのころ戦っていた症状を振り返りながら書くことができるんじゃないかなと思います。もしかして今まさに悩んでいる人がいたとしたら参考にしてほしいなぁなんて思うわけです。
幼稚園前後
あれは、彼がまだ1、2歳ぐらいだった時、ふと、あれ?もしかして、なかなかこいつしゃべりださないな、言葉を発しにくいのかな?と思ったわけです。あの頃、お買い物に行って、これは何か、と聞くと、1歳の彼はなんでも「ウメ」と答える時期で、梅のふりかけとか指さして、これは何?「ウメ」あはは、とか言ってた。そしたら、のちのち、彼には申し訳ないのだけど、耳に水が溜まってしまっている時期があったようで、気が付いてあげられなかった。耳がしばらく、聞こえにくかったようです。
お兄さんは、そのうち弟と妹が産まれて、別にお兄さんになりたかったわけでもないのにお兄さんとなって、お兄さんとして生活するわけです。
そして家出未遂
5歳だったと思うのですが、事件が起こります。彼は、自分の学習机まわりをだれも触らせたくない。まぁ、その日は触らせたくない日だったのだと思うのですが。触らせたくない日なのに、弟も妹も勝手にさわる。やめてほしいのにやめない。もう、だから、やってられない、と。
ASDの人がそうなのか、お兄さんがそうなのかわかりませんけれども、お兄さんは結構、こう、堪忍袋に”温度高いままの何かをため込んでいくタイプ”で、ストレスを逃がす方法を、ちゃんと心得ていないのかなと思う。
なんというか、人としての感情を表す六角形があったとします。困ったことがあったときとか、悲しいことがあったときとか。人はその六角形の中をバラメーターが上がったり下がったりする。でも、まぁ、人はめったにその六角形は飛び出していかない。なぜなら時々ストレス解消をするから。というのがワタシの見る、感情のイメージなんですけど。
ASDのお兄さんは、パワーを溜める。ほんで、どっかのタイミングで六角形を飛び出していく感じがする。おいしいケーキ食べるとか、カラオケ行ってみるとか、そういうので解消するのが当時は苦手だったのではないかな、だからぎゅっとパワーを溜めて六角形を飛び出す日ができてしまう。うん。今日ここに記載するのは、まだそこまで行かない、家出未遂の話。
事件は突然に始まるのですが、当時、玄関にリュックをしょって、大きな声をだしている5歳のお兄さんがいる。今すぐ外に出たい。なぜならイモウトちゃんが、ボクの机をやめろっていうのにさわるから!家出する!って。
「そうか、ご飯はどうするのかね」とワタシ。
公園にリスがいるからそれを食べる!という、なるほど、血なまぐさいなぁ。きっと捕まえることはできないだろうけどなぁ。
とりあえず、今日はお怒りをしずめていただいて、ね。家出はいつでもできるから、イモウトさんにはワタシのほうからちゃんとお伝えしておきますので、ゆるしてあげてください。まぁまぁ。
っていう、ちょっと5歳にもなりゃぁよくある、かわいげのあるエピソードだと、ここまでであれば思うのですかね。でも、彼が成長した今になって思うと、もしかしたらこれはそういうかわいげエピソードではなかったのかも。もしかしたら、何かあったら逃げの一手をまずかますという、これはその彼の、この手の感情のあふれだすキザシだったのかもしれない。