いつかの備忘録①
こんな夢を見た。
私は家にいるのが苦痛だった。
母の金切り声。父の暴言。一人暮らしをしたくても、親は私を引き留めた。お金の当ても頼れる当てもある訳じゃない。時間は淡々と過ぎていく。
私は金魚を飼い始めた。昔、お祭りで金魚すくいをした時、屋台のおじちゃんが入れてくれたような小さなビニール袋に入っていた。昔使っていた水槽を物置から取り出した。汚れていた砂利と水草を丁寧に洗った。
綺麗な水を入れた。そして、ビニール袋の中の金魚を水槽に入れた。
赤いヒレをひらめかす様はとても綺麗だった。3歳くらいの頃の無邪気な幸せに戻してくれる気がした。
ある日のこと。年に数回ある激しい夫婦喧嘩のあったその晩、金魚はお刺身になった。
私は今までの人生を立ち返った。静かな庭に赤いそれを埋めた。
私の手にはその生臭さと死だけが残った。
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