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香港国家安全維持法の制定から見えた国際政治のバランスオブパワー

はい。ブルーバレーことBlue Valleyです。


今回は時事ネタ回ですね。

先日施行された中国による国家安全維持法について意見を述べてみます。



香港国家安全維持法とは

6月30日の現地時間23時過ぎに公表されたのが、香港国家安全維持法です。

この法律についてはニュースなどでも大きく取り上げられたので、その内容に関してはご存じの方が多いかと思います。

この法律に関しては色々な見方があるかと思いますが、私がこの法律に関して持った感想としては、「一国二制度を一国一制度に近づけている」といった感じですかね。

中国本土の本懐は中国本土の要人にしか分からないことでしょうから、ここでは中国の狙いを探るのではなく、この法律の施行に伴った国際政治の動きについて見ていきたいと思います。


法律制定の歴史的背景

まずは、今回の国家安全維持法が制定されるまでの歴史を、国際政治に焦点を当てて見ていきます。

国際政治は、冷戦の前後を境に大きく民主主義社会主義の二つに分かれました。民主主義の導入国は日本、アメリカ、イギリスなどがあり、社会主義の導入国は中国、北朝鮮、ベトナムなどが挙げられます。

民主主義は、所謂多数決の世界であり、個人が尊重されるような方針を採ります。一方社会主義は、国民国家をひとまとめにして考え、一部の人間が全体の意思を決定する方針を採ります。

香港は、社会主義国の中国に属しながら、イギリスに統治されていたという背景から、民主主義の方針を採っています。中国も、この状態を「一国二制度」として正当化しており、中国は民主主義と社会主義が共存している珍しい国なのです。

さて、現在の世界は、アメリカという巨大な民主主義国家と、中国というこれまた巨大な社会主義国家によって二分されている状態です。かつてのソ連が社会主義国の筆頭として君臨していたように、今は中国が同じ筆頭の立場に鎮座しているのです。今回の法律制定に関しても同じで、民主主義国家と社会主義国家の方針のぶつかり合いであると言えます。



法律制定の本当の問題点

今回の法律制定に際して日本国内やアメリカ、中国などで批判的な意見が多く見られるのは、これらの国々が民主主義国家に属しており、対峙する社会主義国家のやり方を、自分たちとは異なるものとして非難しているわけです。

ですが、ここで考えたいのは社会主義国家の考え方です。もし民主主義の国が国家安全維持法のような法律を制定しようものなら、それこそ主義と矛盾する完全におかしな行動です。しかし、中国はれっきとした社会主義国であり、一部の人間(中国本土の要人)が全体(中国本土+香港)を管理することは実は彼らにとって当たり前のことなのです。

逆に中国のような社会主義国からすれば、これまでの民主主義国の採った方針もおかしなものであったに違いありませんし、民主主義国が社会主義国に対して警告などを行うことも、彼らにすれば余計なお世話なわけです。

香港は民主主義を方針とする地域であったからこそ、民主主義を方針とする諸国家から非難を浴びたのです。


問題は、中国(社会主義国)が香港(民主主義国)への介入をしないという約束を破った点にあります。

今は香港が中国に属するからという理由で社会主義の介入が行われることになりましたが、このような前例を作ってしまうと、今後近隣国だからという理由や、貿易で大きな影響力を持つからといった理由で、中国が社会主義の介入を行うようなこともあり得るわけです。

民主主義国家は世界でも多数を占めており、積極的に民主主義の拡大に努める必要はありません。しかし社会主義国家は、世界でも非常に少数派に甘んじており、生き残るためには必死に勢力の拡大と自分たちの強大化に努めるしかないのです。

これまでは、国際政治の場において民主主義も社会主義も、互いに忠告や警告を行うことに行動を留めていました。しかし今回の法律は、民主主義に実効的な影響を及ばすこととなり、それまで維持されてきた民主主義と社会主義のパワーバランスが崩れようとしているのです。

かつては、核という強大な力をチラつかせることでお互いに牽制しあっていたアメリカとソ連でしたが、現在はよく言われるように貿易戦争です。

アメリカと中国がどちらも貿易に制限をかけ始めると、両国に依存しているような小さな国はたちまちどちらかの勢力に吸収されるでしょうし、冷戦の時のように世界の二分化に拍車がかかることになります。

核はその見えない恐怖で世界を混乱に陥れましたが、次は貿易に基盤を持つ物資の不足で世界が苦しむことになることもあり得るのです。

このように、世界のバランスオブパワーの崩壊は、今言われているような、「トランプは嫌いだ」とか「中国のやり方は気に食わない」といった小さなレベルを超えた国際問題に発展する可能性があるのです。



日本の動き方、世界の動き方

さて、日本は今回の法律制定に際して、中国に対して遺憾の意を表していました。日本は、ご存じの通りアメリカの保護の下にいて、国際政治の場ではアメリカと足並みを揃えることがほとんどです。

国際政治の場で日本は、国民国家の安全を維持するために難しいことをやっているように見えますが、その意思決定の仕組み自体は単純で、アメリカ、ひいては民主主義の考え方に沿った決定を下せばいいのです。こうした主義に沿った意思決定が集まって重なって国際政治は成り立っているのです。


国際政治を実際に動かしているのは、アメリカでも中国でもありませんし、道徳心や人道などでは到底ありません。

世界を動かしているのは、民主主義や社会主義に代表されるような国家の方針に基づいた利害関係に他ならないのです。

国家という単位は、困っている人がいるから助けに行くのではなく、自国に不利益が生じるから人を助けるのです。国と国が仲良くするのではなく、その国の方針同士が仲良くするのです。

韓国だって何も日本が嫌いだから噛みついてくるのではなく、中国や北朝鮮という国に囲まれる状況や、自国に不利益が生じるという立場から、あのような行動を起こすのです。


国際政治は、二つの大きな主義と国家間の利害関係によって成り立っていることをしっかり理解し、国という単位の行動に対して非難をするのではなく、その国際政治における構造自体に行動の答えを見出すことが、世界を見る上で大切なことだと私は思います。



今回はここまでとなります。

国家安全維持法制定→悪いこと

と決めつけるのではなく、

国家安全維持法制定→社会主義進出の可能性の発生→民主主義国家も同様の措置を行う可能性→貿易戦争の悪化の可能性→物資の不足でより多くの人命の危機に発展する可能性→バランスオブパワーの崩壊の可能性

といった感じで、一つの物事に対して何度も可能性を思考錯誤することが大切なのではないかと私は思います!

この主張に共感して頂けた方はハートを、異論がある方はコメントにてお知らせ頂けると幸いです!


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