【読書】『神さまの貨物』ジャン=クロード・グランベール
素晴らしすぎて読後しばらく茫然とした。
絶望と、それを貫いてなお強く輝く愛を、
こんなに美しく簡潔に描けるなんて。
並の作家じゃない。
昔むかしの深い森、奇妙な荷を積む貨車、列車の窓から投げられた赤子、強制収容所。
不穏なキーワードが並ぶけれど、
そして確かに呆然とするほどの絶望が描かれてもいるのだけれど、
それでもこれは紛れもなく、愛についての物語だ。
最後の最後、絶望の果て、それでも人が失うことのできない愛についての、物語。
失うことができないのは、たぶん、その愛が自分自身とイコールだからなのだと思う。
自分自身は失えない。
たぶん死んでも失えない。
物語の最後、エピローグで作者はこう語る。
童話の柔らかさとノンフィクションの鋭利さが同居する、震えるような傑作。
2021年本屋大賞翻訳部門第2位。