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【読書】『七つの人形の恋物語』ポール・ギャリコ
久しぶりに、お風呂にまで持ち込んで読んだ。
ほんの少しの時間でも、その世界から離れがたくて。
ポール・ギャリコ。
名を聞くばかりで、読んだことがなかった。
河合隼雄の『ファンタジーを読む』の中で紹介されていて、読んでみたくなった。
天性のストーリーテイラー、と聞いてはいたけれど、これほどとは。
蛍のような作品だった。
生きて、光を放っていた。
暗闇のなか、川のほとりで息をひそめて見つめなければ知ることのできない類の、脈動する美しさ。
捕まえてひとつひとつを分解して説明すれば、その美しさは失われてしまう。
生きてふうわりと浮かぶその淡い光を、川面に映る影ごと見つめなくては。
虫かごに入れて自分の部屋に連れてきたのでは、その命のやりとりの美しさを見ることはできない。
こちらから、彼らの生きる場所に出向かなくては。
「これは恋の物語であると同時に、多重人格の物語です。」
そんなふうに伝えても、この本の魅力を伝えることはできない。
ぜんぜん、できない。
それは、光を失った蛍を見せて「これが蛍です」と言うようなもの。
悔しいけれど、
「どうか丸ごと読んでみてください」
としか言えない傑作。
ポール・ギャリコ。
脱帽です。