【絵本】『おにたのぼうし』作・あまんきみこ/絵・いわさきちひろ
「多様性」という言葉なんて、知らなくても。
思いやりと優しさに溢れた、少し切ない、大好きな絵本。
節分がやってくるたび、読みたくなります。
娘が小さい頃は、この絵本を一緒に読んで、いろいろ話しました。
おにた、優しいね。
おかあさん、早くよくなるといいね。
女の子、嬉しそうだね。
おにた、かわいそうだね。
「鬼」って、なんだろうね。
おにたを追いはらう人間のほうが、鬼、みたいだね。
「多様性」という言葉は知らなくとも、
この絵本を読むだけで、
子どもはとてもたくさんのことを感じ取り、理解します。
豆を投げられる立場の「おにた」。
お母さんの病気が早く良くなるように豆を投げて厄払いしたい「おんなのこ」。
違う立場、違う視点。
でも、心の奥には同じ優しさと思いやりと愛があって。
お母さんを大好きな女の子の気持ちも、
お友達に喜んでもらいたいおにたの気持ちも、
ひとりぼっちになりたくないふたりの気持ちも、
どれも等しく自分の中にもある子どもたちは、
おにたにも女の子にも、自分自身を重ねて見ます。
「ほかの人になってみる」というその体験の、なんて豊かなこと。
読み聞かせにも、ぜひ。