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【読書】『青い鳥』モーリス・メーテルリンク
大人にこそ、読んでほしい物語。
『青い鳥』。
ノーベル賞作家の名作戯曲。
誰もが一度は耳にしたことがあるだろう、超有名なタイトル。
きっとあらすじもなんとなく知っている。
けれど、この本を最初から最後まで本当に読んだことがある人は、あまりいない。
それはすごく、もったいないことだと思う。それくらいの名作だ。
【あらすじ】
「ひたすら幸せになりたがる病気」にかかった醜い妖精の娘を救うため、幸せの青い鳥を探す旅に出たティルティルとミティル。同行者は犬や猫や光や水や砂糖たち。
夜の城で、幸福の館で、未来の王国で、兄弟が目にするこの世界の本当の姿とは。幸福の意味を問う寓話を江國香織が甦らせる。
「幸せとはなにか」という目のくらみそうな真っ向勝負の王道テーマを、真正面から見つめ掘り下げていく本書。
実にまったく戯曲らしく、まるで目の前にあるように情景が浮かび上がり、冒頭からあっという間に物語に引き込まれる。
それでも少しずつしか読み進められなかったのは、この「幸せとはなにか」という大きな謎を解く秘密の鍵が、あちらこちらに散らばっていたためだ。
行間に、見落としてはならないものがたくさんたくさん詰まっていて、少し読んでは立ち止まり、少し読んでは立ち止まり、という具合にしか、読めなかった。
そしてその一文一文の、なんて豊かで芳醇なこと。
幸福と感嘆と満足のため息が、いったい何度、漏れたことだろう。
子どもも読んでもいいけれど、細部に至るまで芳醇なこの傑作は、大人の方に、ぜひ。