星の生まれる夜に|七夕|せきぞう、さんの絵に寄せて
「やっと...逢えましたわね」
「そうだね...こうしていると、きみの心に触れられそうな気がするんだ...」
「あら、心はいつもともにありますわ」
つややかに微笑んで、織姫は淑やかに恋人を見上げました。
「そうだ...でもなぜか、きみの瞳をこうやって見つめていると、いつもは触れ得ない何かに誘われているように思えて...なんだろう、不思議な気持ちになるんだ」
触れ合ったふたりの指先から、ミルク色の星くずが小さくはじけ、次々と連なって、ふたりのいる場所はますます明るく輝きました。
天帝が、ふたりの逢瀬を禁じたのは、なにも彼らが恋に潤んで勤めにいそしむことを怠ったからではありません。
ふたりが寄り添い、見つめ合い触れ合うと、星くずがあたりを満たし、新しい星が生まれすぎるからでした。
天の川があふれ出して、天の原の辺り一面が星の雫で埋め尽くされ、なにかもう洪水のように、天の実りを一時に集め、押し流してしまうのでした。
地上の夜は星雲の煌やかな光で満たされ、鳥も獣も人間たちも、あまりの眩しさに、眠ることができなくなってしまうのです。
ふたりが一年に一度、七夕の夜にだけ逢うことを許されるようになったのは、そういったわけでした。
七夕の夜に、地上に星が降るのには、そんな理由があったのです。
今日は七夕だから、関連の記事も多いかしら...とnoteを見ていたところ、見つけたのが、せきぞう、さんの絵。
幻想的な星空に短冊の差し色が映えていて、思わず見入ってしまいます。
この景色の中の織姫と彦星は、こんな会話を交わしそう...と、コメント欄に寄せるフレーズを書いていたら、物語になりました。
おとぎ話的にしたのと、キップリングの童話『ゾウの鼻はなぜ長い』ではないけれど、由来もの(?)風に仕立てました。朗読しやすいように、ふりがなもふっておきました(◔‿◔)♡
洒涙雨。「洒」は、そそぐ、すすぐ、という意味で、七夕の夜に降る雨のこと。再会のあとの惜別の涙とも、雨が降って逢えなくなった悲しみの涙とも言われますが、「会えた喜びの涙」という説もあるようで、今回はそちらを採用。降るのは雨ではなく、じつは星かもね(^_-)-☆
それにしても、この織姫は、照れて素直にしゃべれなくなっているような気もしつつ...書いてる私が一番照れますが(^^ゞ
デジタル画って、ガラス質の透明感、つややかさ、シズル感を出せるメディアという意味では油彩画を超えている...と、思うのですが、せきぞう、さんは卓越したコントロールでそのつややかさを見事に使いこなすことのできる方です。
デジタルだけでなく、鉛筆やボールペン、パステルなど、いろんな画材を使い分ける、マルチタレントなせきぞう、さん。
また、書もすばらしくて、達筆なだけではなく、テーマにあわせて書体も七変化。書がデザイン画のようにも見える複層的な愉しさをお持ちの方です(^▽^)
さらに言えば、絵に添えられたつぶやきも味があり、朴訥な雰囲気が女子のココロをくすぐったりも♡ たまに詠まれる俳句にもセンスを感じるので、楽しみにしています。
多才なせきぞう、さんのアートワールドを、ぜひご覧になってみてくださいね。
いろいろ好きな絵があって紹介しきれないので、1点のみにしますが、一番初めにみんフォトで見かけて、「すごい絵を描くひと見つけた」と思ったのがこちらです↓
せきぞう、さん、久しぶりにコラボさせていただきました。ありがとうございました。