いつかの星のさざ波に|詩
あの頃住んでいた星の
澄み切ったかけらが
この街で暮らす
わたしを
時々
なだめるようにやってきて
透き通る熱となって
しみこんでくる
溶けていく淡星のように
哀しいほど優美に
いつか
記憶も喪って
あなたに触れたはずの
指の先から
清らかに腐っていく
その日がくる
ひそやかに
砕け散る
星のさざ波のなかで
わたしをつかまえたあなたは
決して私にふれてはならないと
まっすぐなまなざしで
言い含めた後で
わたしを深く抱きしめた
永劫にも似た一瞬に
深く差し込んだ流星
あれがもし夢ではなかったのなら
どうか
種を蒔くように
浄夜を透かせた水とわたしを
大地に振り撒いてね
ひとつひとつの細胞が
次の命の材料になるのなら
わたしは消えてしまうわけじゃない
夜ごとの朝に
大地から
新しい命が
一斉に芽生えはじめ
わたしも芽ぐみ
大地から顔を出して
細い腕を空に伸ばし
お日さまを見上げる
すべての罪が浄められたのなら
星痕をとどめた小さな粒に
身体のつくりをまかせればいい
もう二度と過って
あなたの裳裾にふれたりしないように
月となり
太陽となって
わたしに光をそそぐ
あなたの澄んだ瞳に
今日も見守られながら
またひとつ
小さな星の花を咲かせるから
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