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古い台所②

 昭和に生まれた私は、昭和の時代をよく知っています。人生における大きなイベントを、男性主体で進めることが当たり前だという考えが、まだ根強く残るのを見聞きしてきました。
 田舎に住む女性が、家の建築やデザインなどについて口をはさむことはなかったと思われます。大工さんのセンスに任され、今みたいに機能的な建材も乏しかったのでしょう。
 半世紀前にタイムスリップしたような台所は、そんな思いをほうふつとさせるものでした。
 台所は北向きにあり、日中でも少し暗い感じがします。黄土色の床の上に白いクッションフロアを敷くことにしたのは、少しでも明るくなればと願ってのことでした。
 ただ、この判断は数年後にはとても後悔することになりました。
 その理由は2つあります。

 第一に色が白いので汚れが目立ちます。特にシンク下部はマットを引いていても、油や細かい飛び散りなどで使うごとに汚れていたのでしょう。都度掃除して拭いてはいましたが、木目調のクッションフロアなので、しばらく経つと細かい目地のなかに汚れが目立ってきました。
 対策として定期的にブラシ状のもので目地の汚れを取っていました。でも一度に広い範囲では行えず、きれいな所と汚れている所がまだらになり、余計に汚く見えてしまうのです。
 
 もう一つはすでに床自体が歩くと沈む状態で、床板の張り替えが必要だったにもかかわらず、そのままクッションフロアを敷いてしまった事です。
 気付いてはいたのですが、夫も私もそれを何でもないこと、取るに足らないことと見なしてしまいました。
 歩くたびに沈む床は、私に小さなストレスを与え続けました。不思議なことに、夫は全くストレスには感じないと言っていました。どちらが正しいとかではなく、少しでも問題があるなら、解決する方がいいと今ならはっきりわかります。床についてはリフォーム代を節約するべきではありませんでした。
 問題があるのに見ないふりをするのは、問題を大きくするだけです。
 結局7年後に床板の張り替えをしたのですが、そのころには歩くと床が割れて下の巾木も見えるようになっていました。それまでのストレスや掃除の手間暇を考えたら、とても無駄な時間とお金と神経を使ったなと実感できます。

 でも、この時はまだそのような気持ちになることもなく、白いピカピカの床に大喜び。床が黄土色から白に変わって、台所がとても清潔に見えました。そして、壁も白くしたいという思いがむくむくと湧いてきたのです。


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