うつ病は甘えだという前に(患者/ご家族向け)
「うつ病は甘えてるだけ」、「うつ病と言って逃げているだけ」と言う意見をよく耳にします。症状が良くわからないので、想像から言っているのだと思います。しかし本当にそうなのでしょうか?
甘えや逃げと言う言葉に、患者さんは苦しんでいるのではないでしょうか?
その患者さんがご家族だった場合、病人に対して悪化する言葉を投げかけるのは、どんな意図があるのでしょうか?
考えてみてほしいのですが、例えばインフルエンザや俗にいうCOVID-19と称される新型コロナウィルスに感染し、体調を崩した場合に「そんなの甘ったれている!」と患者さんに言うのと同じです。
何度でも言いますが「うつ病」は医学的にも病気であり、甘えではありません。
うつ病などのメンタル疾患に対して、偏見や差別をする人は、メンタル疾患の理解度は30%未満と言う結果もあるように、正しい理解をしていない方々が、個人的偏見やイメージなどから「うつ病は甘えてるだけ」、「うつ病は怠けている」と何の根拠もない意見を押し付け、決めつけてきます。
それで病気が治るのならば大いにやればよいですが、そんなエビデンスはありません。
ここでは、うつ病は甘えという前に理解しておかねばならない事や、ご家族に打ち明ける場合を考えていきます。
「甘え、怠けている」と言う意見はスルーするべき!
実際にうつ病や適応障害になったオイラからすると、「うつ病の苦しさを体験するぐらいなら、逃げや甘えられた方がはるかにマシ」です。
これだけは断言しますが、逃げや甘え、怠けで済むなら、うつ病になるより楽なんです。
うつ病は「ただ息をしているだけで何もしていないけど、生きていることがつらい」と思うほど辛いのです。逃げや甘えでうつ病になることはありません。
「うつ病は甘え、逃げ」だという根拠
うつ病が甘え、逃げ、怠けているだけと言う人は何を根拠に言っているのでしょうか?
そういう方は、うつ病になった後の生活などを見てそう思うのかもしれません。ずーっと寝てばかりで、布団から出られない。何ならお風呂も入らず、食事もどうでも良くなっている。そういうところだけを見てイライラしているのかもしれません。
それは今まで日本人の生活に関する考え方が強く影響をしていると思います。朝は早く起きて、規則正しい生活をする。ダラダラしないなど。
まるで高校生の子供が不良にでもなったかの如く、うつ病になった配偶者を叱ったりします。
ですが、本当にそれが医学的に病気と認められているものの正しい対処なのでしょうか?医学的なエビデンス、根拠が無いのに「うつ病は甘えている」と断言できるのでしょうか?叱って治るなら苦労はしません。
「辛いのは本人」と言うことを忘れていませんか?
叱る人の顔色を見る、叱る人の押し付ける通りの人になろうとする。でもできない自分に絶望する。そういう事まで想像できたうえで、感情をぶつけているのでしょうか。
気軽に叱れる人、怒気を露わにできる人は、自分の感情を簡単に他人にぶつけられる人です。恐らくそこまで感情の解放度が高い人は、うつ病になりにくいでしょうし、うつ病の患者の気持ちもわからないと思います。まず先に自分の気分を大切にして、感情のままに他人にぶつけるのが当たり前になっているからです。
自分の思った通りにならないから、イライラをぶつける。それで病気が治るなんて聞いたことが無いので、今すぐやめましょう。
理解する、受け入れることがどれだけ患者が救われることか・・・
家族へ伝える
うつ病に限らず、メンタル疾患については、家族に伝えるのを躊躇すると思います。言い出しにくいと考える人が多いことからも、理解が進んでいないかなとは思いますが、お気持ちはわかります。
そこで、オイラが考えるご家族への伝え方やアプローチを記載します。
ご家族の方へ
うつ病などの精神疾患は、好んでかかっているわけではありません。患者になった方々は家族に伝えることを、非常に悩んでから伝えています。聞いてショックかもしれませんが、現実を受け止めましょう!
理解が無い人は「現実を認め、受け入れること」を拒否する人が多いと感じています。それでは治せるものも治せません。
「病気を認めたら、お子さんと家族でどこにも行けない」、「現実を認めたら、自分の育て方が悪いと認めたことになる」などなど、いろいろな思いがあるかもしれません。ですがこれらの思いはエゴでしかありません。
現実問題として病気になっているのです。そこから目を背けないようにしてください。病気である現実を受け止め、一番苦しんでいるのはご本人ですから。自分たちのエゴで、大切な家族を重症化、悪化、長期化させますか?
理解がありそうな場合(若い世代、配偶者など)
うつ病への理解がありそうな場合は単刀直入に伝える方が良いと思います。
私は元配偶者が理解があったので、単刀直入に伝えました。
ただし、うつ病になった当時は子供が小さかったので、配偶者のみ伝えていました。元配偶者から配偶者の親御さんには伝わっているとは思います。
基本的には元配偶者の協力を得て治療に専念していました。
そういった意味では、とても恵まれていたと思います。
理解が無さそうな場合(自分の親の世代など)
高齢になればなるほど、うつ病への理解が無い場合が多いみたいですが、世代関係なく、理解が無い人もいます。
ご実家で一緒に住んでいる場合、ご家族のご理解が無いと、療養どころか悪化することも考えられるので、ご家族の理解が必須となると思います。
ですが、真向からぶつかり合うような伝え方をしてしまうと、まとまるものもまとまりません。
この場合は、すこし工夫が必要と感じます。
①理解が無い人でも必要なら伝える
親御さんと実家で暮らしている場合、突然出勤しなくなれば不審に思うはずです。理解があるか、無いかは伝えた時にわかると思いますので、思い切って伝えましょう。
②理解が無い場合
「そんなはずはない!」、「それはお前が甘えているからだろう!」と否定的な言葉が返ってくる場合は、うつ病に理解が無い場合が多いです。
その場合は、自分の言葉で説得することはあきらめましょう。お互い感情的になって、意固地になってしまうからです。少なくともすぐに理解し合えることはありません。
③うつ病が理解できる簡単なものを、目に触れる場所に置く
うつを簡単な図解などで解説している本やパンフレットなどを目につく場所に置いておくのも効果的です。主治医にパンフレットがあればもらってテーブルの上などの目につくところに置いておく、うつ病に関する書籍を置いておくなどで、少しでも目に触れて理解してもらうようにしましょう。
また、診察に付き添っていただき、医師と会話してもらうのもアリです。
むやみやたらに医者を嫌っている場合を除いて、正しいうつ病の知識を、医師から聞くのは有意義だと思います。
ただし、こういう頑なな人に限って、医師の元に同席することを嫌がる傾向がありますし、何なら医師を信用していない医師嫌いな人が多いので、それでも難しい場合があるでしょう。
このような場合は、何をどう説明しても、絶対受け入れない!という訳の分からない信念をお持ちのようです。いわゆる老害などがこれにあたるかもしれませんが、その場合は難しいので一旦あきらめましょう。
お子さんの場合
これはかなり難しいところではあります。
まだ理解できないほど幼い場合、病名を伝えてもピンとはきません。
それでも「パパは病気を頑張って直しているんだ」と分かれば、子供なりに気を使ってくれるものですが、余計な気を使わせたくないという想いもわかりますので、ご家族ごとのご判断になるかとは思います。
もし伝える場合、細々説明してもわからないので、頑張っているから手伝ってねと言う感じでもよいかと思います。
思春期になると、お子さんが全く相手にしないこともあるかもしれません。ですが、家族だから協力してほしいところもあると思いますので、こちらもご家庭ごとのご判断になるかと思います。
お子さんは、ただでさえ精神的に不安定な時期ですので、お子さんの性格や状況を踏まえて、ご夫婦で相談して決めた方が良いと思います。伝えたことによって落ち込みが伝播する場合もあるようです。お子様が繊細な正確かどうか見極めて判断された方が良いでしょう。
思春期以降になると、思考も大人に近くなるため、率直に伝えても良いかもしれません。それで家事などを協力してくれたり、辛くて休んでいる時はそれとなく気が付いて、そっとしておいてくれるかもしれません。もしくは配偶者と相談してくれるかもしれません。
頼もしい年齢になっていたら、思い切って伝えてみましょう。
まとめ
うつ病は甘えではありません。それは世界的に認められた病気でもあり、甘えたりさぼったりすることとは区別された病気です。したがって、勝手な思い込みで勝手に決めつけていいことはありません。うつ病などの精神疾患にかかった人は、病気になったことを情けないと思っていたり、恥じていたりすることも多いです。そのような精神状態にもかかわらず、大切な家族に「甘えているだけ」などと心無い言葉を浴びせられたら、自分なんて必要無い存在と思っても無理はありません。
大切なご家族を自らの手で窮地に追い込むような言葉をかけることは辞めましょう。
また、うつ病になった方自身も、卑屈に考える必要はありません。このストレス社会において5人に1人がうつ病にかかるので、誰しもがかかりうる病気です。そこまで我慢しすぎてしまったのは残念ですが、そこまで頑張った自分をねぎらいましょう。
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