映画『ねこさがし』上映に際して
10月17日から23日まで開催される「ソウル動物映画祭」(SAFF)にて、自作『ねこさがし(The Cat Hunt)』が上映されるため、19日から韓国へ遠征いたします。
『ねこさがし』は、私が前に住んでいた街で、一度も野良猫を見かけたことがなかったため、okuさんと近所に猫探しに出かけるというだけの、ごくささやかなドキュメントになります。
映画祭の規定にある制作年の要件を満たしていなかったため、コンペティションではなく「特別プログラム」での上映になりましたが、このような変則的なノミネートは私には珍しいことではありません。
プログラムマネージャーの황연정(ジュン・ファン)さん曰く、「映画祭の焦点と一致している」というのが理由らしいですが、2021年1月の完成以降、殆ど上映の機会に恵まれず、半ば捨て猫のような状態だったこともあり、このノミネートには「保護」のニュアンスすら感じ取れました。
ハングル語による自作解説ははじめてだったので、それもまたうれしかったです。
【<고양이 사냥>은 미스터리나 도시 괴담처럼 시작하지만, 최종적으로 우리가 사는 도시의 동물들에 대해 어떤 관심을 가지고 어떻게 유기적으로 상호작용하고 있는지 질문한다. 코로나바이러스 팬데믹 중에 만들어진 작품으로, 인간이 도시의 동물을 얼마나 편의적으로 처리하며, 그에 무신경할 수 있는지 보여주는 실험영화이다.】
(『ねこさがし』はミステリーや都市伝説のように始まるが、最終的には、私たちが住んでいる都市の動物に我々がどのような関心を持ち、どのように有機的に相互作用しているかを問いかけてくる。コロナウイルスが猛威をふるうパンデミックの渦中に作られた作品でありながら、人間が都市の動物をどれだけ便宜的に処理し、それに無神経であるかを示す実験映画である。)
황미요조(ミヨジョ・ファン)さん、素敵なプログラムノートをどうもありがとうございます。
ところで、ジュンさんのいう「映画祭の焦点」とは何でしょうか。
公式サイトのステートメントによると「人間と人間以外の存在との関係についての考察を促すことを目的としている」とありますので、そのことを意味しているのかもしれません。
日本にも「かわいい生きもの特集」等といった括りで、動物の動画コンテストめいたものは頻繁に行われていますが、その殆どが視聴率を稼ぐための道具のような扱いなので、あまり好きにはなれません。
もう少し議論を深める目的で開催される映画祭はないのだろうかと探してみたところ、NPO法人地球映像ネットワークさんが隔年で開催している「世界自然・野生生物映像祭」というものがあったようなのですが、現在は母体の解散により事実上終了しています。
映画を作り続けることも大変ですが、映画祭という場を保ち続けるのも困難な時代になったということかもしれません。
ということで、例によってプロフィール欄に私なりの映画祭「映画の細胞」を宣伝しておきました。
その成果もあってか(?)、ビデオコンテスト受賞者へプレゼンターとして挨拶や贈呈を行うという大役をいただくことになってしまいました。
通訳さんもいるということなので、お言葉に甘えて何の準備もしてないのですが、緊張は否めません。(猫でいえば、人慣れしてないので……)
でも、今回の旅は、盟友岡本和樹さんもご一緒してくださるということで、ちょっとだけ(というか、かなり)心強いです。
岡本さん、一緒に韓江さんの原著を探しに行きましょう!(岡本さんはとっくに二冊所持している)
コンペティションには、犬や猫など人間に近しい種以外にも、アザラシやカワウソ、ネズミやカメ、ウシやカバなど、様々な動物が取り上げられています。
サムネだけ見ると、どれもとても可愛らしいのですが、それぞれに切実な問題提起がなされているようです。
また個人的に「Seoul Animal Film Festival」 (SAFF)は、サイトやポスターのビジュアルデザインが秀逸だと感じました。
デザインは、イベント事では真っ先に経費削減の煽りを受けるポジションなので、この一事を取っても映画祭に優秀な人材が入ってきていることが伝わってきます。
「動物映画」というニッチな枠組みの中に、様々な文化人が参与する余地と深みのある開かれた映画祭を目指して努力してきた証左のようにも映ってまいります。(日本の映画祭には文化人というより、宣伝目的のタレント起用が多い気がしますけど)
また、会場では、プラスチックやビニール素材を避け、包装も最小限に抑えているそうです。もちろんボトル入り飲料水なども提供していないそうなので、私達もタンブラーを持参して行こうと思っています。
こういう約束事のある映画祭も楽しいですよね。
「細胞試験管」はゴミに入るのかな?……
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