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超新感覚サイバーラブサスペンス映画『メイクアガール』

あなたが映画を見る基準はなんだろうか?

原作が好きだから?
監督が好きだから?
知ってる声優が出ているから?
劇場予告で気になったから?

私の場合で言えば劇場配布のチラシを見たことだった。

『メイクアガール』……SF恋愛物? "ちょびっつ"とか”プラスティックメモリーズ"とかの系譜好きなんだよね~

 オリジナルアニメかぁ……安田現象って誰?ってレベルだったので調べてみると、ショート動画で以前見たことのあるCGアニメーターの人だった。

記事を読む前にこの作品を見に行くか迷ってる人がいれば見に行って確かめてくれ。気になるのなら見てみればいいと思う。

踏ん切りがつかないのなら、とりあえず原案となっている以下の動画を見て判断するといいかもしれない。








※以下、ネタバレを含む内容です。



・本題に入る前に良かった点


最初に良かった点を言えば、CGを使ったアニメーションは凄く滑らかで良かった。長編映画ながらショート動画のクオリティから落とさずによく出来ていると感じられる。

 自分が最近見たアニメ映画で言えば『ブルージャイアント』の演奏シーンや『THE FIRST SLUM DUNK』等を思い出すが、日常の何気ないシーンから後半のチェイスシーンやあのシーンなどの動きに監督の拘りを感じる。

声優陣の演技も素晴らしいものだったと思う。
特にヒロイン役の種崎敦美演じる0号は良かった。

自分の中に生まれた感情を証明するために奮闘する様子。
ファミレスのアルバイト等で社会経験を積み、主人公のことを好きになり、自らの感情について向き合い、最後の結末に至るまでの演技は凄かった。


映画を見て出た感想は……「なにこれ?」



どちらかといえば疑問であり、「はぁ?」と言った内容が近いのかもしれない。「刺激的で脳が焼かれた」とか「なにこの展開!? 凄い斬新!!」とかそういった類ではなく、「俺は何を見せられたんだ?」って。

普段なら面白かった、つまらなかった程度で終わるが何かが引っかかった。

・「想像にお任せします」と説明する気がないのは違うんじゃないか?

劇中の世界観がまったく見えてこない。

親友が彼女を作ったらパワーアップしたって言うから、俺も彼女を(物理的に)作ったら研究者としてパワーアップ出来る!って所から始まる作品。

あっさりと人造人間を作って、すぐに同じクラスに編入。自分を好きになるように設計して、でも主人公同じ名字だから人騒ぎあって……

尺の都合もあるから端折ったりするのはわかる。本題はそこではないが……ないのだが……いきなり人を作った事を周囲が受け入れてる世界ってなに?

その割に「第3人類」とか思わせぶりな単語だけ出てきて、投げっぱなしである。第3ってことは第2人類は?とか特に何事もなく映画は終わった。

言葉じゃなく映像で見せるシーン(0号やソルトのように明の目が黄色く光る、明も人造人間だった?)もあったと思うが、圧倒的にわからん部分が多数でおそらく理解させる気がない。

これは後から知った事だが本作はノベライズが決定している。

試し読みをちらっと見たら、こっちには第2人類って文言があっさりと出ている。一言入れる尺もなかったのか?


考察して楽しめってことかもしれないが、「明が義手になった事故って何?」、「茜ちゃんはなんで、こんなやつ(主人公)が好きなんだ?」とか考察しても一生わからないと思う。

「気になる人は小説を読んでね」じゃなくて映像で語って欲しいのよ。

宣伝ポストで「見た人によって解釈が違う」と書いてあったが視聴者に勝手に脳内保管しろって言ってるようにしか見えない。

・見せ場のシーン以外の歪さ


今回の映画であなたが良かったと思うシーンはどこですか?

 私は0号が目の前で悪役のソルトが明に危害を加えられないのを見て、最初は小さい岩を投げて、そこから少しずつ車の破片とか大きなものを投げていき、作られた自分の枷に抗い己の感情が作り物ではない事を証明しょうとするあのシーンです。

だからだろうか、その前のシーンの悪役……絵里さんが小物過ぎて意味がわからない。

ソルトを窃盗して改造した上でヒロインを誘拐なんて強硬手段までして、
連れているソルトが負けたらあっさりと諦める。

おい、明への嫉妬心はどうしたんだ!?

 人間がロボ(サポートロボがなんで武装仕込んでんの?)に勝てないのはわかるけど、ずっと嫉妬してた割に何の気概もない。あのシーンに持って行くためだけに無理やり繋げたように感じられた。

 あとは明の養父らしいおじさんの存在。明の母親と関係あるキャラだけど
限りなく存在感は薄いし、絵里さんが全部説明すれば済むのでは?と。

 その割にエンドロールで出てきたり、その尺何かに使えなかった?
母親のことは絵里さんも知ってるみたいだし本当に必要だった?

 他の人の感想も少し見たが「ショート動画の繋ぎ合わせ」といった表現が
一番しっくりきた。原案のラノベから、2:30秒のアニメになって、今度は
90分の長尺になったから仕方ないのかもしれない。

 これらを一言で言えば「脚本が悪い」と言う事なんでしょうけど、原作・脚本・監督を全部安田現象さんが1人でやった結果なんだろう。

「作家性が爆発してる」とか言えば聞こえはいいけど、応援してるファンは本作を見て大絶賛しているんだろうか?

・映画を見て最後に残ったもの


あなたは最後のあのシーンを見てどう思いました?

私は単純に胸糞悪かったです。


 最後に振り返った0号は明のことを「アキラさん」から「アキラくん」へと明確に呼び方を変え、声のトーンやENDロールは生前の母親のように
振る舞っていた。

元の0号の意識はもうないの? あれは母親の意識なの?
少なくともあの必死に抗い、証明しようと戦っていた0号じゃないだろう。

悲しいからとかそういうのじゃなくて、あれだけ0号の成長とか明の考え方の変化を描いてきてこの最後は何なんだ?
エンドロールは大団円みたいにおまけ映像が流れてるし……

 結果だけ見れば明くん的には家族が意識を取り戻して、母親の稲葉も研究を引き継いで貰えて本望だろう。結果としてヒロインだけがあの葛藤で
死んで終わりに見えるが……これ実はホラーだった?

このなんか釈然としない終わり方は読み切りのラノベとか昔のエロゲー
みたいだなと思ってたら、実は監督がそういう経歴らしい。

「画作り発のアニメーション作家ではないぶん、画風に関してはあまり意識していません。自分の作品に“らしさ”があるとすれば、語り口になってくると思います。なにかを得るならなにかを失うようなバランス、完全なるハッピーエンドではない、そんなバランスを意識しています。これはニトロプラスに所属していた時に出会い、1人で作るようになってからも大切に使わせてもらっている、自分にとっての思想のようなものです」

上記インタビュー記事より

 バランス取った結果なのかわからんが、ニトロプラスの尖った部分だけ抽出されても困る。あの最後に納得出来る要素が皆無で意味わかんないよ。

もっとじっくり内容を考察して、監督の表現したかった事とか命題みたいなものを見れば違うのかもしれない。私にはそこに辿り着くまでの気力はないし、そこまでの熱量をこの作品から感じ取れなかった。

 シーン別に見れば良いとこもあるけれど、1つの映画作品として見た時に駄目な方が優ったというのが最終的な感想。何が引っかかったのか書いてみることで、ある程度モヤモヤした物が見えて多少スッキリした気分だ。

 この作品で水溜0号というヒロインに出会えた事は嬉しかった。

ただ、『サイバーラブサスペンス』というジャンルは私には合わなかった
ようだ。


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