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おじさまと猫11巻 【ネタバレあり読書感想文】
★★★★☆
Amazonにレビューしたものです。
著者:桜井海
出版社 : スクウェア・エニックス (2023/5/11)
発売日 : 2023/5/11
言語 : 日本語
「3月のライオン」を思い出しました。
「きのう何食べた?」も。
世の中には、
日本語は通じるのに話しても分かり合えない人間、
他人を自分の利用する道具としか見ない人間、
他人には他人の気持ちがあることを理解も尊重もしない人間、
が、
残念ながら結構な割合で存在しています。
そういった人間をいかに判別し距離を取るかは、生きていく上で割と必要なスキルですが、学校では教えてくれません。
さらに残念なことに、そういった人間が血縁の場合は、今の日本で完全に縁を切ることはほぼ不可能です。
自分が急変し搬送されれば、急変時の対応は血縁に問い合わせされ決定され、死亡すれば必死で歯を食いしばって働いて貯めた遺産の一部は血縁に相続されます。
たとえそれが、自分を酷い目に合わせもう2度と会いたくない相手でも、何十年も会っておらず縁を切った相手でも、です。
この11巻で、息子くんたちからおじさまに話が戻ります。
ふくまるに荷物を持ってもらい、初めて小林や周りに頼って、歩き出したおじさま。
もう一度立ち上がろう、舞台にまた立とう、と、ふくまると前を向き、がんばりつづけてきました。
が、やっぱりコンサートは辛いままです。
自らともう一度向き合うため、支えて頼りたかった人に会うために、実家にふくまると向かいます。
実家?
正確には、奥さんの実家でした。
(すごいな、ふくまる。外出大丈夫な猫って、、、)
しかし、途中で事態は急変します。
このマンガは、基本猫好きのいい人ばかりのほのぼの猫マンガですが、人間の怖さ嫌らしさが時々ちくりと出てきます。
ヒビノン母は、自分にしか関心がなく、息子ですら無関心の、次元の違うわかり合えない怖さでした。
一方、おじさま母は、ねっとりとした執着を絡める怖さを醸し出し、近寄ってきます。
おじさまの、ふくまるが粗相をしてもしからず逆に褒める対応や、友達のできない息子への共感的対応を見るにつけ、どうして自分の子に肯定的に接して育てられるのか疑問に思っていました。
人は、自分の親に育てられた様に自分の子を育てることが多く、実母に否定的に育てられた場合、多くは自分の子に否定的に接しがちだからです。
おじさまには、この人の穏やかな支えがあったからでしたか。
血のつながった家族に理解されず分かり合えなかった少年は、外に家族を見つけ、必死に手に入れたのでしょう。
でも、そうしてやっと手に入れた家族を失った。
その穴は埋まらない。
なんとか埋めようと今も必死にもがき続けています。
「うちの子におなり」
血を超えて種を超えて家族になった父と子は、美少年=パパさんを支え守れるのか。
冬樹少年は、母の呪縛から解放されるのか。
しかし、作者によると、ラスボスにも色々あったようです。
実際おじさまのイケメンは母譲りのようですし、スパルタ教育があったから世界に名の知れたピアニストになれたのも、また、事実でしょう。
冬樹くんと鈴音ちゃんは、家族のままだったのか、それとも恋という脆い関係に一度戻ってから、また家族になったのか。
その辺の青春も見てみたいところですね。