くれそん

ロストジェネレーションど真ん中。

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最近の記事

香りのエピグラフ

厚みのある長方形の紙片であるムエットに、香水のサンプルを滲みこませる。その前に香水の名前を書いておく。 密閉できる厚手の透明な袋に入れて香りが変わっていくのを観察するためだ。 本来は肌の上で、その人の持つ香りや体温と混ざり合ったものが香水の本領といったところだが、酔ってしまう香水を知らずにつけると頭痛持ちには苦役となる。 一旦、ムエットで試すのだ。 香水についての情報を同じくらいの大きさのメモに書き込んでいく。一緒にポケット式ファイルに入れて整理していく。その際、出来るだけ

    • 新しい朝と風

      小説の本筋には関係ないような描写でふと思い出されることがある。 昔、Aくんは「以前読んだ小説に『毎朝生まれ変わった様に目覚める』という文章があって、とても良いと思っている」と言っていたことがある。 Aくんと私はほんの一時、惹かれあっていたが、根本的に違う種類の生き方をするタイプであった。 そのせいか、私にはその気持ちが全く理解できなかった。 目覚めた今朝は昨夜の続きであり、昨夜は昨日の続きだ。そうでなければ自分が誰だかわからなくなってしまうではないか。 また初めから戦い、

      • あらかじめ失われた個

        前回の投稿が2017年の11月。4年半の歳月が流れた。その間に実はいくつかの投稿をしていたが、削除した。 そもそも、このnoteは「レコンキスタ」をテーマとしていた。その意味は私が病気で失ったもの、仕事や日常生活やメンタルの安定を取り戻す様子を書いていこう。自分のために。ところが4年半で状況は変わった。 正社員の仕事に就き、安定するはずであった。しかしまた精神が不安定になり続けていた通院で投薬量が増えた。 私が失地回復すべきもの、失われた地は、病気のために我が手を離れた

        • 鈍色と「エイリアンズ」

          昨日、出先でラジオを聴いていたら堀込泰行さんがでていて、新しいバージョンの「エイリアンズ」がかかった。鈍色の空の下、小雨が降り出していた。 近所の品揃えの悪いスーパーに寄って翌日の豚汁の具材と、高菜を買った。 今日は朝から、薔薇の苗を植える予定にしていた。お天気もなんとかもちそうなのでコーヒーを淹れて朝食用に飲むだけを残して、湯で温めておいた魔法瓶に注ぎ、トーストを焼いていたら夫が起きてきた。 植え込むための腐葉土と牛糞を買うのに、どこのホームセンターが朝早くからやってい