「どっちが似合うと思いますか?」
同じデザインで、カラーバリエーションが
ホワイトとブラックのTシャツ。
お客さまは両方試着され、悩んだ様子で私に尋ねる。
アパレルの会社に勤めて12年、これまで何千、
何万回とこの質問をされただろう。
私よりキャリアのある先輩ですら
【接客は永遠のテーマ】と話すほど、
正解が無く、毎日が学びの連続である。
ここで、
どちらか一方を似合うと言ってしまえば、
「じゃあもう片方は似合わないのか、
私はこっちが良いと思っていたのに」
と、気分を悪くされることも実際あった。
日本語には「褒める」言葉が数多くある。
「どちらもお似合いです」「素敵です」
「かわいい」「かっこいい」
ここで大事なのは、お客さまに非もなく、
選ばれなかった商品の質も下げてはいけないということ。
接客に正解はないと思うが、私自身もお客さまも
納得できる範囲でお答えするなら、この言葉を選ぶ。
「私はホワイトの方が好きです」
単純な表現だが、「好き」という言葉は
他のどんな褒め言葉よりも勝ると思う。
もちろん、
それまでのお客さまの様子を見た上で
発言しなければいけない。
「ホワイトの方がお顔が映えていた」
「今着ているコーディネートにすごく合っていた」
試着しているわずかな時間で、
ホワイトの方が好きな理由を
言語化できるようにしておく。
「好き」+「理由」を伝えることができれば、
お客さまにとっても参考材料程度にはなるかもしれない。
ホワイトが好きだと言われたけど、
私はやっぱりブラックが好きだな。
私はブラックが好きだけど、
ホワイトも好きと言われたので両方とも買おう。
重要なのは「好き」という気持ちのまま、
お買い物を終えることができているということ。
あくまで私の持論ですが、
好きなものは大切にしようとするし
飽きることはないのです。
*
*
*
*
私とファッションの話をすると
幼少期はセーラームーンに憧れ、
キャラクターがプリントされたTシャツ、カバンや
靴下を身につけないと一日が始まらなかったし、
高校生から20代前半は、ロックバンドに興味を持ち
スタッズを取り入れたパンクファッション、
厚底靴などがマイブームに。
流行のファッションなどにも手を出したりする事もあったものの、
着たいと思う頻度が非常に少なく
すぐに人にあげたり廃棄したりしてしまった。
極めつきは数年前の引っ越し。
派手に断捨離をした事で
衝動で買ってしまった服たちは、手元には一枚も残っていない。
現在はひとつ買ったらひとつ手放すという方法で
数が増えすぎないようにしている。
どうしても劣化して着れなくなってしまう事を除いて、
やっぱり好きなものは残ると思う。
いかに自分が満足して、
納得して着れるかどうかを重要視しているので
たとえ誰かに「それは似合ってないよ」
と言われても私はあまり揺らぐことがない。
人はそれぞれ好みがある。
好きな色、好きな柄、ジーンズやスカート
衣服の着こなしはこうあるべきだという軸は、
誰しも少なからず持っているはず。
TシャツはボトムにINするのか、
袖や裾は折るのか、サイズ感はジャストか、
オーバーサイズにするのか…
そういった個々の基準から少し外れたことにより
おそらく「似合わない」という判断になってしまうのだ。
でも、どうして他の人の好みに
私が合わせないといけないのだろう。
もっと自分に正直に、
好きなものを好きなだけ身につけても良いはず。
自分を偽る必要なんてない。
「似合う服」が分からなくなってしまったら
「好きなもの」を探してみる
さらにその中から
「どれが好き」か考えてみる
そうやって悩んでる時間も「好き」になれたら
あなたがファッションを楽しめている証拠
Una/プロフィール