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書いたSSをまとめます。自分用です。 背景はフリー素材お借りしました。
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2019年7月の記事一覧

まさか先を越されるなんてね

 いつか別れが来ると知っていた。
 求婚し、されて番になり、子を無し血を繋いでいくことを良しとするだけの生き物。
 同じ「生」を持ち、違う「種」に産まれただけ。

「やあ、元気かい」
 朝になるとそう言って窓を開けて、彼は私を迎えてくれる。
 夕刻なんとなく帰りそびれた私を見つけると部屋に入れてくれた。一緒に寝たこともある。
 私が小さかった頃、怪我をした私を手当てしてくれた彼はまだ少年の色を残し

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君と僕の興味

君と僕の興味

「あーあ、つまんない」
 賑やかな校舎内の中、洩らされた小さな声を聞き逃さなかったのは他でもない。
 帰らないのか? と疑問を向ける級友達に手を振って、教室から出て行く姿を確認。窓際で頬杖をつく女子生徒の元へと足を運ぶ。
「この天気、やだよねぇ。帰らないの?」
 問いかけの最後には、彼女の名字をさん付けで。
 僕と彼女は対して仲良くない。滅多に話すこともなかった。
 この年頃としてはこんなものなの

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温めてくれない

温めてくれない

 大学卒業と共に一人暮らしを始めた。何もかも真新しい家具や生活用品で囲まれた小さな自分だけの城。
 なんの不満もない――はずだった。
 と言うのも、実家を出てからどうにも眠りが浅い。

 新生活に慣れない。
 買ったばかりの寝具の寝心地に慣れない。
 始まったばかりの社会人生活に慣れない。

 心当たりは山ほどあった。

「眠そうな顔してるな」
 今日も先輩上司に肩を叩かれる。
「早く布団に帰りた

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