とりあえず全部忘れよう!と髪を切って気持ちをリセット
さまざまなタイプの男性とデートを繰り返してきた。
こんなにも簡単に毎週末デートの予定が次々と舞い込んでくるなんて人生で初めてだった。
同時に、ここまで最悪の恋愛を短期間に数多く経験するなんて、想像を絶するおぞましい展開だ。
そろそろ本当に最後にしたいと思って、テニスが趣味というスポーツマンの男性に私からアプローチしてみる。
デートの数日前から、美容成分たっぷりのシートマスクで、いつもより念入りに肌メンテして早寝早起きを心がける。
アラフォー女子にとって、婚活中はシートマスクが必須アイテムと実感。
定期おトク便にして、ここはコスパと美容効果のバランスを取る。
初デートの約束の時間に、その男性は待ち合わせ場所の駅の改札口には来ていなかった。
しばらく約束の時間を過ぎて、改札口ではなく「駅の改札を出た大通りに車で来てる」とLINEで連絡があった。
当日ドタキャンではなかったことに少し安堵する。
どうすべきか戸惑っていると「改札を出て、早くこっち来い!」と催促のメッセージが届く。
でも、初対面で車デートはマッチングアプリではルール違反。
初対面の相手の車や密室で2人きりになることは、リスクがあるので禁じられている。
しかも待ち合わせを駅の改札口にしておいて、実は車で来ているという強引なやり方に嫌な予感がした。
断りたかったけれど、ものすごい圧が強く、おとなしく従うことにした。
車でランチを食べに行った。
拍子抜けするほど、普通のランチデートだった。
しかし、また車に乗って最寄りの駅に向かう途中、信号待ちのタイミングでいきなり「ホテル行こう」と言われて、速攻で車のドアを開けて降りた。
そのような展開になることを覚悟していたので、なんとか逃げ切れた。
早足で最寄り駅に向かって歩いていると、LINEで「また会いたい」とメッセージが届いた。
とりあえず、すぐに返信はせずに既読スルーした。
2回めのデートは絶対断ろうと心に決めていた。
ただ、どう返信しようか迷っていた。
駅に着いて、どこかベンチに座って心を落ち着けようと思った。
すると、LINEの通話機能でその男性から着信があり「今日はごめん、またデートしよう」と言い出す。
私が恐る恐る「ごめんなさい」と言うと、相手の態度が豹変して「バカ野郎、ブース」「調子こいてんじゃねーよ」「お前みたいなブスの年寄り、相手にするわけねーだろ」と怒涛の反撃が始まった。
私は絶句して、すぐにiPhoneの電源を切った。
駅の改札前に着いて、まずは深呼吸。
もう一度、iPhoneの電源を入れて、LINEを速攻ブロックして、マッチングアプリでその男性を完全にブロックして終了。
気がつくと手が震えていた。
たくさんの人が往来する駅前で、大学時代の友達とかサークルの先輩とか、社会人になってから仕事で出会ってきた男性の姿を思い浮かべて、どれだけ自分が恵まれた環境にいたかを思い、しばらく目を閉じていた。
ふと誰かと電話で話したくなるけれど、そんな相手も思い浮かばない。
しばらくそのまま駅の改札前で待ち合わせしているかのように立っていた。
あ、あの人に電話してみよう。
私が17歳から22歳まで片想いしていたヘアサロンのかっこいい兄貴的存在の男性のことを急に思い出した。
ずっと好きだった憧れの人。思い切って告白して、見事にフラれたけれど。
それからはなんだか気まずくて、他のヘアサロンに通うことにして、そのまま音信不通に。
検索してみると、ヘアサロンの電話番号が見つかった!
あの人にロングの髪をばっさりカットしてもらって、もう一度やり直そう。
ヘアサロンに予約の電話をかけると、本人が出て「久しぶりだなー、覚えてるぞ!」と優しい言葉をかけてくれた。
懐かしい声にホッとした。
少し雑談したら元気が出てきて、さっきまでの絶望感はまるで夢だったかのように、自然と笑顔になっていた。
「ありがとうございます!」
心の中ではその百倍くらい「本当にありがとうございます!」と感謝していた。なんだか救われた気がした。
「それじゃあ、予約をお願いします」とカットの予約を入れて、急に元の自分に戻った気がした。
今日のことは全部忘れてリセットしよう!
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