タクシードライバーと井の頭公園デート
それから、警戒心が高まったのか、行動は一層慎重になった。
お相手は、真面目で誠実なことが一番だと思う。
そんな折、個人タクシーの運転手をしている年下の男性からアプローチを受けた。
とても紳士的で、初めてデートしたカフェではさりげなくドアを開けてくれた。こういうさりげない気遣いはうれしい。
その男性は、最近ようやく念願の独立を果たし、家の近くに駐車場を借りて、個人タクシードライバーとして充実した日々を送っているという。
ただ、結婚した場合は駐車場の契約があるため、「こっちに引っ越してきてほしい」と言われた。
そして、夜の仕事が稼ぎに繋がることから「深夜タクシードライバーとして働くことに決めている」という。
彼はまさに「安全運転」という言葉が似合う人物で、欠点が見当たらず、なぜモテないのか不思議で仕方がなかった。
本人は「出会いがなくて」と言うが、実に良い人である。
井の頭公園でのデートの後、彼が「せっかくなのでタクシーでドライブしませんか?」と提案してきた。近くにタクシーを用意してくれていた。
初対面の相手の車に乗るのはアプリの注意事項に反するが、さすがにタクシーならば大丈夫だろう。
「家まで送ります」と言われたが、いやいや、家の場所を知られるわけにはいかない。
そこで、家の近くのバス停まで送ってもらうことにした。
ところが私はものすごく車酔いしやすいタイプで、次第に気持ちが悪くなってしまった。
「ちょっと夜景を楽しみながら、遠回りして帰りましょうか?」と言われ、このタイミングで「車酔いしました」とは言えなかった。
窓を開けて、必死に耐えた。
もう一度デートに誘われたが、悩んだ末に断ってしまった。
車酔いしたことをきちんと言えなかったこと。
それに加えて、「引っ越し」や「深夜勤務」などの条件を最初のデートから突きつけられてしまい、「そういうことは、少しずつお互いを知った上で、相談していければ良かったのに」と思った。
彼の正直さに触れて、逆に自分の不誠実さを気まずく感じた。
でも、いつか終電を逃したらお客さんとしてタクシーに乗せてもらおうと、LINEはブロックせずそのままにしている。
もちろん、タクシー代はきちんと払うつもりで。
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