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首の慢性的な痛みは運動すれば治るのか

1.痛いから我々のところに来る

原因がはっきりと分からない首の痛みは、世界中で多くの人々が経験しているやっかいなものだ。私たち医療者、特にクリニックで働いているセラピストの多くは「痛み」を抱える患者さんに出会い、患者さんは「痛み」をとりのぞいてくれることを期待してクリニックにいく。

ということは、私たちが「痛み」のメカニズムについて十分な理解がない限り、患者さんのそれを、取り除いてあげることはできないとおもう。

前回投稿した「ペインリハ」関連記事でも少し話しているが、「痛み」というのはとてもやっかいで複雑で、知れば知るほど沼にハマる。

2.最近の首の痛み研究界隈は何をやっているんだ

そんなかで見つけたこちらの論文。

Comparative effectiveness of physical exercise interventions for chronic non-specific neck pain: a systematic review with network meta-analysis of 40 randomised controlled trials ←クリックで原文にとべます。

慢性的な非特異的首痛に対する運動療法の比較効果:40件のRCT研究を対象とした系統的レビューおよびネットワークメタアナリシス

少しカタカナ多めですが、かみ砕いていうと、この研究では40件の首の痛み関連の研究・論文を集め、それらをまとめて解析することで、慢性的な首の痛みに対するさまざまな運動療法がどれだけ効果的かを総合的に評価してみたっちゅうこと。

そして、長期間にわたる首の痛みに対する運動療法の効果サイズは非常に低いとこの研究では結論付けている。

3.もう少しこの研究の内容を知りたい方へ

研究の背景

慢性的な非特異的な首痛は、世界中で重大な健康問題であり、多くの人々が経験しています。この研究では、異なる種類の運動療法が、首痛の痛みや障害に対してどれほど効果的かを比較することを目的としています。

誰に何をしたのか

慢性的な非特異的首痛を持つ成人を対象に、異なる運動療法の効果を比較しました。痛みの強さと痛み関連の障害について、複数の運動療法(モーターコントロール、ヨガ、ピラティス、太極拳、筋力トレーニングなど)が評価されました。

結果

痛みの軽減や障害の改善に対する運動療法の効果は限られており、特定の運動が他の運動よりも優れているとは言えませんでした。どの運動が良いかという違いはほとんどなく、最も「効果的」とされた運動療法でさえ、機能改善が10-15%、10段階のVAS/NRSで約2.5ポイントの痛みの軽減という結果でした。モーターコントロール、ヨガ、ピラティス、太極拳、筋力トレーニングが最も効果的であることが示されましたが、証拠の質は非常に低く、慎重に解釈する必要があります。

結論

慢性的な非特異的首痛に対して、運動療法に大きな効果が期待できないことが確認されました。特定の運動法が他よりも優れているわけではなく、包括的なアプローチが必要です。この研究結果は、臨床医が患者に最適な運動療法を選択する際の参考になるでしょう。

4.白黒つけない方法を考えよう

私は、今回この研究がこう言ってるからどうとか、そういうことを言いたいわけではない。痛みの研究に関して、私は3つの波が存在していると思う。

1.最初の波はメカニクス(力学)に焦点を当てて、からだのここが検査の結果よくないから、だから痛いという説明
2・二番目の波は「Explain Pain」を皮切りに、脳が痛みを生み出しているという説明(だって足が切断されてても存在しない足が痛いという人がいるんだから)
3.三番目の波は社会経済的条件や、自己の認識が過去の経験や現在の環境によって影響を受けるんだという包括面においた説明

我々はこの波のどこか一点に焦点をあてて治療しがちだが、白黒つけずに結局は初心に戻って「今私の目の前で痛みをうったえるこの患者さんは、何者なのか」を理解しながら、そのなかでこの人にとって最適な治療法はなんなんだと悩み考えるプロセスが大事なんじゃないかと思う。

と、偉そうなこと言ってはみるが、今日も今日とて色々と論文を読んでみて、痛みを理解しようと努力する自分を何とか肯定しようとしているのだ。


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