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M&Aによる事業承継のプロセスとステップガイド


後継者不在に悩む会社にとって、M&Aは有力な選択肢の一つです。しかし、M&Aは複雑な手続きや注意すべきポイントが多く、M&A会社に依頼するとはいえ、当事者は具体的な準備や実行方法を理解しておくことが大切です。

今回は、M&Aによる事業承継を検討中の経営者や関係者が、スムーズに準備を進められるように、重要なステップや押さえておきたいポイントをまとめました。


M&Aによる事業承継の概要

M&Aによる事業承継は、会社のオーナーが後継者問題といった課題を解決するために、自社を他の会社に譲渡・統合することで、事業の存続や成長を図る方法です。

M&Aによる事業承継は、いくつかのメリットがあります。まず、経営資源や資金が豊富な会社が後継者になることで、会社の成長機会が広がる点です。また、経営者が売却資金を得るだけではなく、従業員や取引先との関係を維持しやすく、事業の継続性が確保されやすくなります。

一方で、M&Aによる事業承継はデメリットもあります。中小企業の場合、経営者自身が中心となることが多く、M&A後の事業方針や企業文化の統合に難しさが生じることも少なくありません。

最近では、詐欺的な買い手会社とのM&Aでトラブルに発展する事例もあり、このようなリスクを回避するためにも、戦略的な準備が求められています。

M&Aを通じた事業承継は、単なる経営の引継ぎに留まらず、将来の発展を見据えた経営判断でもあります。

事業承継M&Aの準備ステップ

M&Aによる事業承継を成功させるためには、計画的な準備が不可欠です。これらのステップに沿って進めることで、買い手会社との交渉や引継ぎ後の安定した運営が実現しやすくなります。

1.現状分析と目標設定
まず、自社の現状と把握することが重要です。財務状況や経営資源、競争優位性などを分析し、承継後の目標を設定します。この段階で、事業承継の未来が定まっていれば、その後のプロセスも一貫性を保ちやすくなります。

2.事業価値の評価
事業承継M&Aにおいて、買い手会社が重視するのが「企業価値」です。買い手が納得する価格でM&Aを成立させるために、財務情報や市場ポジション、人材資源などをもとに、企業価値を算出するバリュエーション(評価)を行います。

※適切な評価方法で、準備段階で自社の価値を把握しておくことは重要です。また、価値を最大化するためのコスト削減や業務効率化など、経営改善策も積極的に取り入れることが有効です。

3.M&A会社の選定
M&Aは専門的な知識や経験が求められるため、信頼できるM&A会社のサポートが欠かせません。これらの専門家は、候補先との交渉やデューデリジェンス(詳細調査)、契約条件の調整など、M&A成立のための支援をします。M&A会社を選ぶときは、実績や得意分野、業界知識などを確認し、自社のニーズに最も合うM&A会社を選定しましょう。

※1、2の作業は、自社のみで行うのが難しい場合もあります。アドバンストアイ株式会社は、1、2の作業からサポートしています。

相手先の選定とアプローチ

M&Aの成功は、適切な買い手を見つけることだといっても過言ではありません。

1.買い手候補の選定
理想的な買い手は、売り手会社の事業価値を理解し、シナジー(相乗効果)を生むことができる会社です。例えば、自社の製品やサービスが買い手会社の事業と補完関係にある場合、M&Aによって双方の成長が促進される可能性があります。こうした相手先選定とアプローチを通じて、事業承継M&Aの成否は大きく左右されます。

2.アプローチと初期交渉
買い手候補を絞り込んだら、次に実際のアプローチを行います。この段階では、候補先に対して秘密保持契約を締結してから進めることが一般的です。

3.候補の絞り込み
初期交渉で複数の候補先が見つかった場合、最も適した買い手会社を絞り込みます。この段階では、事業内容や企業価値を理解しているか、譲渡後に期待するシナジーがどれくらい実現できそうかなどを評価します。

M&Aの交渉と基本合意の締結

M&Aによる事業承継を円滑に進めるために、M&Aの交渉はとても大切なステップになります。交渉から基本合意に至るまでのプロセスは、M&Aにおいて最も緊張感のある段階です。

1.秘密保持契約(NDA)
M&Aの交渉に入るまでに、まず「秘密保持契約(NDA)」を締結します。これは、交渉過程で取り交わされる情報が外部に漏れるのを防ぎ、安心して情報共有ができる土台を作るために必要です。

2.デューデリジェンス(詳細調査)
買い手側の主導でデューデリジェンス(DD)が行われます。これは、財務、法務、人事、知的財産など、多岐にわたる分野で、自社の事業内容やリスクを確認してもらうための重要なプロセスです。

デューデリジェンスの結果によっては、買い手が価格の見直しや条件の調整を提案することもあります。

3.基本合意書(LOI)の締結
デューデリジェンスが進んだあと、双方が取引条件に概ね同意できた段階で「基本合意書(LOI)」を締結します。基本合意書は、M&Aの重要な条件(譲渡価格、譲渡範囲、取引スケジュールなど)を文書化したもので、正式な契約の前段階にあたります。これにより、売り手と買い手は、お互いの期待と条件を明確にして、その後の交渉を円滑に進めやすくなります。

4.基本合意後の最終調整
基本合意書締結後は、正式契約に向けて残りの細やかな条件や手続きの調整が行われます。例えば、取引に伴う支払い方法やスケジュールの確認、契約書の最後の修正などが含まれます。

取引きを確実に進めるために、弁護士やM&A会社と連携して、内容を再確認し、双方が納得できる形で合意を固めていくことが大切です。

最終契約と承継プロセスの実施

M&Aの交渉が最終段階に入り、基本的な条件が双方で合意されると、いよいよ正式な契約の締結と事業承継の実施に移ります。

1. 最終契約(株式譲渡契約・資産譲渡契約)
最終契約では、M&A取引の具体的な内容を法的に定めた契約を交わします。一般的には、譲渡するものが「株式」である場合は「株式譲渡契約」、特定の「資産」や「事業部門」である場合は「資産譲渡契約」を結びます。

2. 承継プロセスの実施
最終契約が締結されると、実際の事業承継がスタートします。この段階では、引継ぎ後の運営がスムーズに進むように、従業員や取引先、顧客に対して事業承継の内容を適切に説明し、今後の方針や体制について周知することが大切です。

3. 取引後のフォローアップ(PMI)
取引きが完了した後も、事業承継が円滑に進むよう、総合プロセス(PMI)が必要です。PMIでは、組織文化や業務プロセスの統合、新体制の構築などを進めていきます。

M&A事業承継を成功させるためのポイント

M&Aによる事業承継は、会社の存続と成長を図るための有効な手段であり、後継者や経営課題を抱える会社にとって、有力な選択肢となり得ます。しかし、成功させるためには、戦略的かつ計画的に進めることが大切です。

信頼できるM&A会社の協力を得て、自社の現状や課題、承継後の目標を明確にし、事前の準備を整え、適切な買い手と交渉を進めることで、会社の新たな成長へと繋がります。

最近のM&Aによる事業承継のトラブルは、さまざまなトラブルの要因がありますが、売り手側にM&Aの知識がないことも一つだと思います。トラブルを避けるためには、売り手側もM&Aに関する概要を理解しておくことも大切なのではないでしょうか。

最後までご覧いただき、ありがとうございます!
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