Uターン起業した不動産鑑定士 地方の魅力、きちんと「地価」に
※本記事は過去にビズリーチに掲載したもので、掲載当時の内容となります
和歌山県南西部、印南町(いなみちょう)の海沿いに地元産品を扱う施設「かえるの港」が2022年春、オープンしました。漁港近くで長らく空き家となっていた倉庫が改装され、特産品を扱うほか、飲食施設やテラスを備え、観光客や地元住民の交流の場となっています。企画・運営を担っているのは同町出身の古田高士さん(42)。外資系ファンドを含め東京で約15年間、不動産業界でキャリアを築きました。その後、故郷・和歌山を拠点に起業。大都市での競争環境から地方創生に転じたストーリーを追いました。
地方の魅力を高める不動産取引を
「この土地、やってみないか」
古田さんが開発の話を持ち掛けられたのは、和歌山県印南町の漁港に面する町有地だった。長屋式の建物は漁業者用の仮眠所として使われていたが、長年遊休資産となっており、だれも再活用しようとしてこなかった場所だ。
はじめは、「自社では建物を賃借するだけにしようか」との考えも頭をよぎった。不動産を所有し施設の運営を担うより、そのほうがリスクを抑えられるし業務の負担も少ないからだ。だが古田さんは、土地は印南町から借り受け、新たに造る建物は自社で所有することを選ぶ。地域への貢献度合いを検討した結果、建設費などの出費は大きくても建物を所有したほうが、漁業協同組合や地域住民と連携し魅力のある施設を運営していけると考えたからだ。