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人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則 単行本 – 2009/8/7

まず、同じ個所を何度も読み返さないと理解しづらいというのが第一印象でした。ところが、根気をもって読み進むうちに、あるいはしばらく時間を経て再読することで、私にとってこれほど示唆深い本はなかなかないと思える一冊になりました。読みづらい理由を、最初は翻訳のせいにしていたのですが、見解が徐々に変わってきて、そもそも言葉で説明するのが難しい事象を扱っているためであり、おそらく原語(英語)であっても言語化が難しく、しかしそれに挑戦した意欲作であると思うに至りました。

「人を助ける」などとタイトルにあると、ボランティア活動向け?と思われかねません。しかし、そうではなく、著者はキャリア発達論や組織開発の専門家であり、内容は人財育成やチームビルディングといった向きの話です。人の成長もそうですし、組織で成果を上げるためのカギも、いずれも人と人とがどう関わるかが重要なポイントになってきます。本書は、そのメカニズムについて書かれた本だと言ってもよいでしょう。著者は学者なので、おそらく書いてあることにはすべて裏付けを持ってます。しかし、それをあからさまに示さずに語るというスタイルを貫いており、そこに私はむしろ好感を持ちました。

本書の趣旨は、「はじめに」のところでかなり鮮明になります。「マサチューセッツ通りはどこですか?」と、著者が道を尋ねられた時のエピソードが紹介されています。尋ねられた時点で自分が知っていることをすぐに伝えることもできるでしょう。しかし、この旅行者が結局どこへ向かおうとしているのか(本当に解決したことは何か)を尋ね返すことによって、その後のアドバイスは変わるし、それに伴って支援する内容の質も変わるということです。旅行者にとっての助かり度合いをアップするにはどんなやり取りが必要なのか。どんな質問がよいのか。その質問をするためにどんな関係性を築くべきか。その関係性を築くために必要なことは何なのか。そして、それが必要なのはなぜなのか・・・。

未来が予測しづらいと言われて久しく、ますます無理難題が提示される人類社会において、今、もう一段ステージアップしないといけない歴史的窮地に私たちは立たされているのではないでしょうか。やや大げさに聞こえるかもしれませんが、私たちは“協力関係構築力”を最大の武器として生き延びてきた種ですから、この領域を無視した次の進化はあり得ないのではないか? そんなことを強烈に考えさせられることになりました。

(おわり)


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