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ガリガリ君の秘密: 赤城乳業・躍進を支える「言える化」 文庫 – 2019/6/5
赤城乳業という社名は知らなくても、「ガリガリ君」をつくっている会社だと言われれば、あぁ~という人も多いのではないでしょうか。そのほか、「ガツンとみかん」といったユニークなネーミング商品や、パッケージを見ればすぐわかる、古くからの定番チョコレートアイスバー「BLACK」など、私にとっては子どもの頃から生活に入り込んでいる国民的企業と呼びたい会社の一つです。
“乳業”ってあるから、もともと乳製品の会社だったのかと思いきや、そういうわけでもないそうで、紹介を読めば読むほど引き込まれる魅力的な食品会社です。ときには奇抜と思われる商品が出てくる赤城乳業ですが、このチャレンジングな社風がどこから湧いてくるのか、その種明かしが書かれているのが本書です。
国内企業のあいだで労働生産性を上げようという声が高まって久しいですが、業務効率化のために仕事を“可視化”しよう、職場で互いに協力し合えるようにプロセスを“見える化”しようと、しばしば言われるようになりました。一方で、“見える化”は確かに大事だけど、赤城乳業は、それと同じくらい“言える化”に取り組んできたというのです。
ワーディングが秀逸過ぎて、補足説明はほとんど不要かもしれません。社員それぞれが、役職や年次、その他あらゆる立場を超えて、お客様のため、商品のため、会社のために良かれと思ったことや、考えたことはちゃんと口に出そうという共有規範。そして、そのための「言ってもよい」カルチャーの醸成に力を注いできたことが伝わってきます。上司や先輩から急に「何でも言っていいぞ」と言われたところで、企業風土は一朝一夕に変わるものではありません。それが長い時間をかけてどのように作られてきたのか、そのカラクリがエピソードとともに描かれているのがこの本です。
なるほど、だから「ガリガリ君コーンポタージュ味」などといった挑戦的な商品が世に出てくるわけだと、その「言える化」パワーを感じることができます。数々の失敗を重ねる中で、ようやく一つの成功が生まれてくるというのは、今も昔もなくマーケティングの常識です。失敗を恐れてトライができなければ、成功機会は激減してしまいます。“言える化”は、赤城乳業だけでなく、世の中に新しい価値を提供したいすべての会社に欲しい企業習慣なのだろうと思います。
それにしても、こういうストーリーを読んでしまうと、コンビニのアイスコーナーに行くたびに「ガリガリ君、今日も元気か?」と声をかけたくなるような愛着まで湧いてきます。すっかり気持ちを持ってかれちゃいました。
(おわり)
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