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筍のお裾分け

この季節、うちの田舎ではワラビやゼンマイなどの山菜、筍が飛び交っている。飛び交うというのは、山菜や筍が知り合い同士でものすごい勢いでやりとりされてるということ。「昨日山菜採りにいったらたくさん捕れたのでお裾分けです。」とか、「知り合いから筍をたくさんもらったけど、うちだけじゃ食べきれないから半分食べて。」とか言いながら贈り、贈られしている。

日曜日の朝、実家の裏庭の草刈りと竹藪退治の段取りを母としていたら、村で唯一の大工さんが颯爽と軽トラックにのって登場し、「これ食べて。」と抱きかかえると1歳児くらいはあろうかという大きな筍を母に渡した。

「母がいつもお世話になってありがとうございます。」とあいさつすると。「いや、こちらこそ昔からお世話になってます。」とおっしゃってくれた。

土曜日には、実家のななめ向かいの方から、柿の葉すしとワラビをもらっている。田舎ではお裾分けで経済のかなりの部分がまわっているんじゃないか。

筍をもらったはいいが、赤ちゃんほどの大きさで、テレビなどで紹介されるような京都の上品な筍の10倍くらいの体積がある。こんな筍堅くて食べられないのではないかと母に聞くと、案に反して、あそこの家からもらう筍はどういうわけか、大きくてもやわらかいのだという。

早速大きな筍2本を台所に持ち込んで下茹でする。まずは皮がついたままの筍を包丁で縦に半分に切る。切り口に指をつっこんで皮をむく。確かに大きな筍だけど柔らかい。包丁がすっと入っていくし、皮をつかんで、ひねるだけでペロンとむける。

皮をむいた筍は適当な大きさに切って鍋にいれて下茹でする。水と米ぬか唐辛子を鍋にいれて火にかける。1時間くらいゆでて菜箸を筍の一番堅そうな部分に突き刺してみる。菜箸が筍の奥まですっと通るようなら火が通っている。火をけして冷めるまでそのままにしておく。冷めてから筍を水洗いして米糠を洗い流す。

後は刺身にするなり、昆布やわかめと炊くなり、春巻きにするなり、好きに料理すればいいのだ。冷凍して保存することもできる。

母はよく筍を身欠き鰊といっしょに炊く。正確には筍と昆布を身欠き鰊と一緒に炊く。油揚げをいれることもある。この地域だけなのかもしれないが、身欠き鰊の出汁で野菜を炊く料理がある。

身欠き鰊と筍の煮

例えばジャガイモやインゲン豆と身欠き鰊を炊いたり、なすびと身欠き鰊を炊くこともある。身欠き鰊独特のちょっと生臭いような渋いような癖のある香りで野菜を食べるようなイメージだ。

今回はせっかくなので、職場でお世話になった人に食べてもらうことにした。能登出身で釣り好きの方で、自分で釣ったアオリイカやら鯛、このわたなど、いつももらってばかりだったので、たまに、できる時には、私からお裾分けしたい。

母は10時から12時までお寺のあつまりがあると出かけたので、その間私は実家で留守番。ぼけっとテレビを見てすごした。

母に駅まで送ってもらって13時20分の新幹線で金沢にもどった。片道2640円と結構な値段だけど、19分で金沢まで行けるのは便利。時間を気にしないで往来できる。加賀市から金沢まで楽に通勤できる。加賀温泉駅では、最少でも1時間に1本は新幹線が停車するので実用上も問題ない。これで加賀市の人口減少に歯止めがかかるだろうか。それとも、より一層金沢への流出が進むだろうか。

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