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胡麻味噌
私が子供の頃、母がごま味噌を作る時には、よく手伝った。
すり鉢で黒胡麻をするときに、母は、私にすり鉢の縁を押さえさせた。すりこぎの動きといっしょすり鉢が動かないようにするのだ。小学2年生の頃には、すり鉢の縁を押さえていた。
子供なのですり鉢を押さえてじっとしているのは退屈だ。自分もすりこぎを持って胡麻すりやってみたい。晩御飯の準備に忙しいはずだったけれど、いやな顔もせずやらせてくれた。
母は左手ですりこぎの下の方を掴み、右手の手のひらを上の先端に軽くあてて、すり鉢のなかをすりこぎで綺麗に縁を描くようにして、リズミカルにゴリゴリゴマスリをしていたが、見様見真似で自分がやってみると、両手を連動させて、スムーズに動かせない。
最初は母の倍くらいの時間をかけて、ぎこちないスリコギ捌きだったが、何回か手伝っているうちにコツを掴んだ。うまくすりこぎを扱えるようになると、胡麻すりが楽しくなる。
胡麻の粒がすり潰されて、サラサラになっても、面白くてすり続けていると、胡麻に含まれる油がうっすらと染み出してきて全体がねっとりとしてくる。どうなるんだろうと、さらに摺っていくと、最後にはねっとりとしたゴマペーストになる。
そこに、砂糖と味噌と醤油を投入して全体を混ぜ合わせると、滑らかなごま味噌の出来上がりだ。ごま味噌を取り出したあとも、すり鉢の内側にはごま味噌が、へばりついているので、そこに茹でたほうれん草を入れて和えれば、ほうれん草のごま味噌和えが出来上がる。
私が30分以上もごま摺りをやり続けるのをみて、母はごま味噌作りは私に任せてくれるようになった。母は味の最終チェックと調整をやってもらった。
今日は、ほうれん草のごま和えが食べたくなったので、スーパーで炒りごまを買って胡麻味噌を作った。昔みたいに、胡麻の油が滲み出るくらいまで、すり鉢ですってやろうと意気込んでみたが、15分ほどで飽きてしまったので、少しすり胡麻の粒の感触が残る味噌に仕上がった。
市販の出来合いのごま味噌は甘みが強いけれど、自分で作る時は甘みは抑える。味噌も少なめにして濃厚なごまの風味を楽しむためのごま味噌が出来上がった。
ほうれんそうのごま和えもうまかったが、ほかほかの温かいご飯にのっけてかき込むのが一番好きだ。箸の先ですくいながら、日本酒のあてにするのもいい。