「あのこと」”中絶”を、あなたはどうジャッジしますか?
時代は、国は、そして”あなた”は。
”中絶”という選択にどう向き合う?
映画「あのこと」を鑑賞しました。
ポン・ジュノ監督が審査員長を務めた、2021年ヴェネチア国際映画祭での最高賞受賞を皮切りに、世界の映画賞を席巻した見逃せない傑作です。
STORY
作品概要
実話を基にしているという点は、非常に注目すべきポイントです。
原作者アニー・エルノーは、完成した作品を観て、涙を流し、「真実の映画を撮ってくれてありがとう」と言ったそうです。
現在80歳を越える彼女の中に、まだ当時の傷跡は残っているのでしょう。
1960年代のフランス
1960年代のフランスは、男尊女卑の意識が根強い国でした。
しかもそういった意識や社会の流れは、日本と同じく1980年代まで続いていきます。
今でこそ、女性の人権理解が進んだ、フェミニズムの国というイメージですが、映画の舞台である1960年代は全く違います。
中絶は、した者もそれに関わった者も犯罪者扱いでした。(フランスでも中絶の合法化は1975年まで実現しません)
”中絶”という単語ですら、タブーな雰囲気があり、劇中では男性ですら口に出すことはありません。”あれ”とか”これ”とか、ジェスチャーで伝えたりしています。(だからタイトルも”あのこと”なのですね)
それに加えて、女性の大学生というのも非常に稀で、女性は大学の代わりに花嫁学校に行き、裁縫や料理のみを習得し、”良き妻”になるものだという考えが蔓延していました。
このあたりも、非常に日本と似ていますね…。
映画では、主人公アンヌは、大学に通い、学士の取得を目指しています。
田舎町の労働者階級の娘でありながら、大学に通えるというのは、よほど秀才であり、そのためにどれだけ努力していたかが、これらの情報を踏まえればご理解いただけるかと思います。
作中で、女性の友人たちが、ガールズトークではなく、単語を熱心に覚えるシーンは、胸を打たれるものがありました。
一見チャラチャラと遊んでいるように見えますが、クラブで「そろそろ帰ろうよ」とか、「テストが不安だわ…」とか、実は根っこは真面目であることが伺えます。
”行きずりで妊娠しただらしない女の子の話”として観てしまうと、物語の本質を見失ってしまいますので、ご注意ください。
圧巻のカメラワーク
「あのこと」は、カメラワークが独特です。
主人公のアンヌにピッタリと密着するような撮り方をしています。
アンヌを正面から撮るアングルでは、アナマリア・ヴァルトロメイの透き通るような肌から、これからの未来への希望や期待を感じることができ、
肩越しに撮るアングルでは、逆境に立ち向かう覚悟や、それに伴う痛みの数々や恐怖を、一緒に体験しているような感覚を味わえます。
この撮影のために、カメラマンとアナマリア・ヴァルトロメイは、何度も一緒に歩いて歩調を確かめたそうです。
これら圧巻のカメラワークによって、”時代や性別を超える旅路”が可能になった訳であります。
私のジャッジは…
こちらはブログでお伝えしたいと思います。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「あのこと」に関する情報をお届けしました。
テーマは重いですが、めちゃくちゃ考えさせられる傑作です。
ブログではフランス映画に関してもたくさんの情報をお伝えしています。ぜひ遊びにいらしてください!