赤い影 ~濃厚な5分間~
映画「赤い影」を鑑賞しました。
ホラー映画好き界隈では、かなり有名なのですが、あまり深く語られることのない作品。
その理由がようやく分かりました…。
語れないというよりも、語りにくい作品なのです。
今回の記事では、映画「赤い影」があまり深く語りにくい理由と、見どころや考察をお伝えします。
ストーリーの根幹に迫るネタバレを含みますので、未鑑賞の方はくれぐれもご注意ください!!
STORY
あらすじだけみると、悲しい幽霊系ホラーのように思えますが、ノンノンノンでございます…。
それでは解説の方に行ってみましょう!
冒頭5分がとにかく恐い
「赤い影」の冒頭は、いきなり娘の水難から始まります。
夫婦の何気ない会話と、庭先で無邪気に遊ぶ子どもたちのシーンの間に、
写真のシーンや、謎の鉄格子などの、奇妙なカットが入り、
娘を抱きかかえる際の静けさ、そして妻のスクリームからのドリル音…。
これらが文字通り流れるように5分間続きます。
あまりにも分かりやすく、恐ろしいシーン。
ほとんどセリフはありませんが映像だけで見事に魅せます。
濃厚過ぎるベッドシーンの訳
「赤い影」は、夫婦のベッドシーンが有名です。
5分間という長さと、本当に愛し合っているのではないかというリアリティ。
原作小説には、このようなシーンはありません。
しかし、ニコラス・ローグ監督はどうしてもこのベッドシーンをいれたかった。
実は、超重要なんです。
このシーンの意味するところとは…
長年連れ添った夫婦は、もうお互いの裸を見ても何とも思わない。
しかし、深く愛し合っている。
しかし、娘の死以来身体を重ねることはなかった。
そして、そんな二人がようやく営んだのですが、その直後に崩壊していく…。
といったこの映画の恐ろしさと、真の意味を伝えるために、絶対に必要だったそうです。
真の意味については、後ほどお伝えいたします。
ドナルド・サザーランド
主演のドナルド・サザーランドは、かつて一世を風靡したドラマ「24」のジャック・バウアー、キーファ・サザンロードのお父さんです。
「M★A★S★H マッシュ」や「バックドラフト」、「スペース カウボーイ」、「アド・アストラ」など、数多くの名作に出演しています。
美しいホラー
「赤い影」はベニスを舞台にしたお話です。
そのため、ベニスの町や川がとても美しい風景として映し出されます。
美しい風景に見とれつつ、赤い少女がいつどこに現れるのかと、画面に釘付けにされます。
加えて、音楽も荘厳なものや繊細なものまで使用され、とても聴きごたえがあります。
こういう美しいホラーは、私の大好物です。
「シャイニング」や「サスペリア」のような雰囲気がムンムンでございます。
ノーラン監督にも影響を与えた
「赤い影」はクリストファー・ノーラン監督の「インセプション」にも大きな影響を与えています。
んだはずの娘が時折町中に現れる様子は、
「インセプション」で、ディカプリオの子どもたちが顔を見せずに走り去るシーンによく似ています。
あの見切れっぷりは、きっと「赤い影」を意識したものであるはずです。
また、ノーラン監督も、妻との関係を作品の中で強く描きます。
作風スタイルもニコラス・ローグ監督とノーラン監督はよく似ています。
ネタバレ解説
※ここから先は作品の根幹に関わる重要なネタバレを含みますのでご注意ください。
ここからは、「赤い影」が語りにくい理由でもある、物語の根幹に関わるポイントを含めて解説します。
よろしいでしょうか。それでは参ります。
夫は未来が視える
「赤い影」では冒頭から頻繁によくわからないシーンがフラッシュのように挿入されます。
あれらのシーンは、夫が未来をフラッシュして視ているシーンなのです。
冒頭の丸い鉄格子は、ベニスのホテルの風景を視ていたり、
来たことないはずの路地に既視感を抱いたり、
妻と老婦人姉妹が船に乗るシーンは、自分の葬儀を予知していたり。
姉妹の霊能者の方が「あなたの旦那さんには能力がある」と妻に告げるシーンは真実だったというわけです。
自身に起こる出来事が視えていたにも関わらず、リアリストである夫は、これらを信じなかったために不幸なラストを遂げてしまったのですね。
(あるいは、死んだ娘が教えてくれていたのかもしれません)
本当のメッセージは夫婦の違い
ニコラス・ローグ監督は、この映画をホラーやESPものではないと語っています。
その詳しい解説はブログで👇👇
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「赤い影」とにかく素晴らしい作品です。あの時代にここまで仕掛けたっぷりの映画を作ったニコラス・ローグ監督が一番恐ろしい。
ブログではたくさんのホラー映画の解説をお届けしています。ぜひ遊びにいらしてください👇