我が心のパリ
魂のピアニスト、フジコ・ヘミング。
“運命の力”にこれほどまで翻弄された人生を、
経験したピアニストが居るだろうか…?
(発行/(株)阪急コミュニケーションズ)
まさか、こうしてパリに住めるなんて考えもしなかった。
名もないピアニストとして終わり、
下北沢の母が残してくれた家で、
死ぬまで暮らすと思っていたから。
晩年に春が巡ってきたのは、心配し続けてくれた母のおかげ。
先のことなんか、わからなかった。
ただ、毎日、毎日、自分に正直に一生懸命生きていただけ。
絶望に打ちひしがれたときは、神様に祈った。
誰だって、そんなに先のことなんか考えられずに、
今を生きているのだと思う。
(本文より引用)
私自身も、社会人として、頑張っていた20代後半の頃…。
あることを、一旦全てを、ニュートラルにして、
全く、未知の領域に入ろうと、決意した時期だった。
その以前に、NHKの特集で、
「フジコ〜あるピアニストの軌跡」を観た。
ハンガリアン・ラプソディーが
冒頭のシーンで流れる。
リストを弾く為に生まれた
ピアニストと言われる人。
気難しい母との関係。
外国人の絵描きの父。
国籍が無いままの亡命。
名門音楽学校での、恋と、苦悩の日々。
不遇なピアノ教師の頃。
人生の大舞台での傷心。
抱えてる孤独。
美しい保護猫達…
とても深いピアノの音色と、
淡々とだが、力強く語られる声。
ただだだ、魅入ってしまった。
音楽が人生まで、教えてくれることがある。
人生の分岐点で。
(再起の場所となった、東京藝大の旧奏楽堂)
ラ・カンパネラは、大好きな曲になった。
私も、あることを、リセットした。
(フジコさんのスケッチ)
分岐点を過ぎて、わかることが大半。
それでも、進む。
でも、誰にも、天から与えられた持ち場というものがあり、
それを受け入れ、正直に自分の道をつらぬけば、
それが、その人のかけがえのない人生になる。
重い雲を背負ってそびえ立つサクレ・クール寺院は、
なんだか、天から与えられた運命を背負って
生きる人間のよう。
人はみんな、運命の下で生きているのね。
(本文より引用)
(49ページ、途中から、フジコさんは言っている)
しょせん、人はひとりぼっちで孤独だから。
家族がいても、お金があっても、恋人がいても、才能に恵まれていても、
誰でも、結局は立派な異邦人。
こうして夕暮れの街に身を置いていると、
どんなに有名になっても、
ああ、私はひとりぼっちだと思う。
だけど、じたばたしてもしょうがない。
大事なのは、覚悟を決め、
孤独とうまく付き合っていくことね。
それに孤独を知らないと、
深く人を愛することもできないわ。
(この本で、一番好きな言葉)
(本当にそうだと思う)
私も、自分に真っ直ぐ、正直に生きよう!
と、思わせてくれた一冊。
今でも、開くと、清々しい空気を感じます。
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