【治療のはじまり】【初期治療の効果】自己免疫疾患(指定難病)とともに生きる (3) - JANGAN MALU-MALU! Living with an Autoimmune Disease
【治療のはじまり】
皮膚筋炎の入院初期にどんな治療を受けているか、自分のためにも、今後同じような病気に出会うかもしれない方のためにも、記録をしておきたい。
まずは薬物療法である。私のように筋症状がなく皮膚症状が強い皮膚筋炎では、間質性肺炎が急激に悪化する危険があるということで、炎症や免疫機能を抑えるために、入院直後から、以下の、ステロイド(炎症や免疫機能を抑える作用をもつ)と免疫抑制薬の併用をすることとなった。
ステロイド点滴
1〜3日目:ステロイドパルス(大量投与)点滴 1,000 mg / 日 × 3日間
4〜10日目:ステロイド点滴 60 mg / 日 × 7日間(1日3回に分けて8時間ごとに、毎晩0:00、毎朝8:00、毎夕16:00)
ステロイド内服
11日目から現在(16日目)継続中:ステロイド内服薬(プレドニン(プレドニゾロン)) 60 mg / 日
免疫抑制薬点滴
6日目:免疫抑制薬(エンドキサン)点滴 750 mg / 日
免疫抑制薬内服
3日目から現在(16日目)継続中:免疫抑制薬内服薬(プログラフ(タクロリムス)) 1.0 mg / 日から始まり、血液検査の結果を見ながら少しずつ増量、16日目現在7.0 mg / 日
このほか、9日目から、血液中の血漿成分を交換する血漿交換を何度か受けることになるが、これについては次回記録したい。
そして、これまでに受けた検査は、定期的な血液検査、採尿、毎日の全尿量測定、心電図、レントゲン(胸部)、CTスキャン(胸部)、超音波検査(腹部・心臓)、骨塩定量(骨密度)検査、肺活量を調べる呼吸機能検査(思い切り吸ったり吐いたり、咳が出るときにはとても辛い)、など。
考えてみれば、点滴を受けること自体、人生初体験な気がする。少なくとも、腕に点滴用の針(末梢静脈留置カテーテル)を何日間も刺したまま生活をするのは、確実に人生初体験である。初めての体験は、ドキドキ不安もあるが、一方で、新しい体験に興味津々、ワクワク楽しんでいる自分がいる。私は、子どものころから好奇心旺盛で、何にでも興味がわく性格だと思うが、いくつになっても、今まで知らなかった新しい体験ができることは楽しいことだと思う。同時に、これまで大した病気も怪我もなく、健康に歩んできた自分の人生に感謝の念がわいてくる。
点滴用の針に加えて、小さなポータブル心電図モニターを常につなげて毎日を過ごしていると、歩き回るにも、シャワーを浴びるにも、夜寝るにも不便で、さすがにちょっとした身体拘束感を感じてくる。そんな不便にも慣れてきたころ、入院10日目には一通りの点滴治療が終わり、腕に刺していた点滴用の針を抜いた。その後、入院15日目には、心電図モニターも常時チェックは不要になったということで、胸からはずれた。入院16日目の現在は、動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数をチェックするため、左手の指にパルスオキシメータだけつけているが、ほぼ普段通りかなり自由に生活できている。身軽になって、解放感を感じ、普段自由に身体を動かしていることのありがたさを噛みしめた。
【初期治療の効果】
入院直後から3日間続けて行ったステロイドパルス(大量投与)点滴の効果か、入院直前に毎日38〜39℃台まで上がっていた発熱はすぐに収まり、手の指、肘・膝の関節、まぶたの皮疹も落ち着いてきた。
ただ、数日経っても頑固なせきはなかなか収まらず、間質性肺炎が急に進行するのではないか、と不安がよぎる。入院4日目の夜、咳のしすぎでかなり胸が痛く、息が上がっていたようで、動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数をモニターしていた看護師が、深夜に駆けつけてくれ、一晩酸素をつないで寝た。酸素のチューブをつなげて寝るのも人生初体験、さすがにその場でワクワク楽しんでいる余裕はなかったが、1分当たり2リットルの酸素に救われ、もしこのときまで入院できずに自宅で寝ていたら、と思うと心底ゾッとした。幸い、酸素をつないで寝たのは一晩のみで、翌日からは落ち着いてきた。
治療の効果をみるには、定期的な血液検査で肺などの臓器の炎症を示すいくつかの数値を確認する。その一つに、フェリチンという体内の鉄の貯蔵状態を反映する値があるが、この値が、白血球の一部のマクロファージが暴れて炎症を起こしている時にも著しく高くなるようで、注目すべき数値となる。入院後約一週間はなかなか数値が下がらず、上昇や横ばいが続いて心配していたが、その後、各数値が徐々に下がり始め、そのころには咳も息苦しさもだいぶ落ち着き、かなり楽に過ごせるようになってきた。
体調が落ち着いてくると、今いる環境の素晴らしさを身にしみて感じるようになった。私のベッドは、4人部屋(たまに周りの患者さんが全員退院して個室になる)病室の窓際で、窓からは大学キャンパスの豊かな緑が広がり癒しを与えてくれる。自分で準備をしなくてもバランス良い3食と昼寝付き、常に体調管理をしてもらい、机・椅子もしっかりしていてWiFi完備なので必要最低限の在宅ワークもはかどり、ちょっとした高級コワーキングスペースにいる気分になるから、不思議なものである。徒歩1分でアクセスできる病院内のコンビニや図書室も充実していて、自由に行けるので、毎日読書に励む余裕も出てきた。治療や検査の合間に、自宅にいるよりも快適なのではないか、と思えるような日々を過ごせている環境に幸せを感じる。
(つづく)
(カバー画像:周りの患者さんが全員退院して個室になった病室)