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過去からの手紙 #1 馬の観音様(Youtube映像も見られるよう一部更新しました)
【前書き】
信じてもらえないかもしれませんが、
ボクの不思議な体験、というか体質をお話します。
野道を歩いていると、
道ばたに昔の苔むした石仏や石碑が、
ひっそりと立っていることがあります。
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ほとんどの人は、気付かず立ち去ってしまいますが、
ボクは、なぜかその石仏や石碑が、
自分を呼んでいるような気がして、
その前にそっとひざまずき、じっと手を合わせます。
5分ほど無心に目をつむって拝んでいると、
不思議なことに、
その石仏や石碑を作ってそこに置いた人々の想いが、
遠い時空を越えて伝わってくることがあるのです。
あるときは古い活動写真のように映像として、
あるときはその人の肉声の言葉として、
あるときは自分がその時代に紛れ込んだようにして・・・。
そして改めて教えられるのです。
どんな苔むした石仏や石碑、祠にも、
それを作った人々の切なる「想い」があったことを。
ボクたちのご先祖様たちが、
いかに自然と真摯に向き合い、
その脅威を畏れ敬い、
その恵みに心から感謝して生きてきたのかを。
石仏や石碑からボクが感じ取り、受け取った、
そんな自然と共に生きた昔の人々の「想い」を、
「過去からの手紙」という形で、
みなさんにお届けしたいと思います。
#1 馬の観音様
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私の家の前は信州と尾張を結ぶ中馬街道。
父は、馬の背に荷を乗せて運ぶ「馬子」という仕
事です。
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信州で採れた米や野菜を馬の背中一杯に積んで、
尾張まで運び、
帰りは塩を積んで信州に戻る、大切な仕事です。
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「オレのアオは山道でも弱音一つ吐かない立派な馬だ」
と、父はアオを、
家族と同じように大切に可愛がっていました。
だから、峠道でアオが倒れて息を引き取ったとき、
父の悲しみは、それはもう、
見ていられないほどでした。
父はアオが亡くなった峠に、
観音様を立てて供養しました。
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私も、他の馬子たちも、アオの観音様の前を通る時、
必ず立ち止まってアオの冥福を祈っています。
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今もアオの観音様は峠道に立っていますか?
今も人々はそこに観音様があることに気付いてくれますか?
そして、今も人々は馬たちを大切にしてくれていますか?
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お読みいただき、ありがとうございました。
この作品はSDGs.TVとの共作で、
プロデュースが、SDGs.TVの水野氏
作・構成・撮影・演出が私、birdfilmの増田
映像編集が桜井大輔さんによる映像作品の原作です。
映像をご覧になりたい方は、下記をクリックしてください。
歌手の池田綾子さんの歌と朗読です。
ただし教員(教育者)登録をしていただく必要があります。
簡単にできますので、ご了解の上、ぜひご覧ください。
過去のYouTubeからも、一部見られます。
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