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浜松・京丸園さんに行ってきました。

先日、静岡県が認定する「農業経営士」の奥様会「静岡県東部・富士農業経営士パートナー会」の視察研修で、浜松にある「京丸園」さんへ行き、鈴木厚志社長と奥様のお話と施設の見学に伺ってきました。

「京丸園」さんは浜松市住宅地に、田畑1.3ha・栽培施設1.3haの農場を管理し、主に「芽ネギ」「ミニちんげん菜」「ミニみつば」などの葉物野菜を栽培している農業法人。「農を通した働きの場づくり」を目指し、1996年より障害者自立支援センターと連携し、農業と障がい者の雇用を積極的に行いながら、事業規模を拡大し続け、2022年4月現在、役員4名、社員10名、パート88名総勢102名(うち障がい者数24名)が働いています。
鈴木社長から障がい者雇用を始めたきっかけとその後、どう会社が変わっていったのかを話を伺いました。

障がい者を受け入れるきっかけとなったのは、事業拡大のために、求人をしたところ、障害者自立支援センターの先生から、「障がいがある生徒を受け入れてみないか」という声かけから始まったのだそう。
試しに2人の生徒を1週間預り、作業をお願いした。
「そのトレーをきれいに洗っておいて」と指示をしたら、その生徒は1時間中、1枚のトレーを洗い続けていた。
そのことを自立支援センターの先生に報告すると、先生から返ってきた言葉で、障がい者が「仕事ができない」のではなく、伝え方が問題だったことに気づかされる。
作業行程を作業分解し、ナビゲーションマップに落と仕込むと、障がい者にどう指示をしたらよいかが明確化するだけでなく、行程管理の考え方が生まれ、作業効率が一気にアップする。

「ひとを仕事に合わせるのではなく、仕事に人を合わせる」ことを考え知恵を絞る。
こだわりが強い人だから、検品作業に向いていた。
鈴木社長の中で変わりやすい人が変わる。という意識が変わっていったのだそう。

障がい者が職場に入るこてで、雰囲気が明るくなり、働きたい職場になる。また、障がい者が働きやすい場所になることで、高齢者でも働ける場所になり、女性が働きやすい場所になる。
農業に福祉をMIXする。異分野がミックスされることで化学変化が起こる。

また京丸園さんでは、2013年にJGAP認証農場に。JGAPとは「より良い農業経営経営を実現するための取り組み」であり、安全性・安心を謳えるだけでなく、合理化が図られる。
そのために重要になるのが「5S」整理・整頓

ユニバーサル農業の先進国オランダでは、約20年前から農業と福祉を融合させた「オランダケアファーム」。ここでは、重度障がい者も受け入れている。
オランダケアファームへ訪ねた際、スタッフにまず何から教えるかと訪ねた「仕事のはじまりは、整理整頓から教えます」と返事がきた。
使ったものをあった場所に綺麗に戻すことから。「これが出来ない人は、農業はできません!」と。

綺麗に壁に掛けられた工具たち。美しい。
今回話してくれた京丸園社長の鈴木氏
こうしてきちんと整理整頓してあると、それを見にくる人がいるほど。

徹底的な合理化を目指すことで、無駄なく気持ちよく作業ができる。
整理整頓をまず教える。そうして仕事の基礎を丁寧に、根気よく教えていくプログラムをつくる。そうすると、重度の障がいがあっても農作物ができるようになっていくそうです。

そして、京丸園さんの掃除道具置き場。
5Sの専用スタッフを派遣してもらい、指導してもらったそう。
L字フックも片手で動作しやすい45度に。
綺麗に並んだ掃除道具たち。マステでガイドを付けて。


障がい者雇用については、雇用側としての心得として「長く付き合う」ことを頭に置いて、京丸園では、組織を支えるスタッフとベクトルを合わせていくことを常に考えているのだそう。

合理化については、ちんげん菜の栽培方法にも積極的に導入している。

ミニちんげん菜の栽培地

昔は、ちんげん菜を栽培するハウスの中で出荷作業を行なっていたのだそう。
ただ、働く障がい者から「ハウスの中は暑い」と意見があがった。
そこで、ハウスの対岸に、出荷用の作業場を作り、温度管理がされた場所で、出荷できる大きさまで育ったちんげん菜のトレーを作業場に移動させて、出荷作業を行うようにした。
そしたら、一日かかっていた作業が半分の時間で終わるようになったのだそう。

ちんげん菜のハウスの道を挟んだ反対側にある、ちんげん菜の出荷作業を行う建物。
涼しく温度管理された作業場。
根を切り、洗浄し、出荷へ。作業一つ一つ丁寧に作業分解し無駄を省く。

作業時間が半分になった要因は、「ヒトが動く」作業から「モノを動かす」動作へ変えたから。
人が動くより、モノを動かした方がより効率的に作業が捗る。
人が動くことで生まれる「ムダ」を徹底して取り除く。
作業にかかる時間が明確になるので、収穫見込みの量に合わせて先読み営業ができ、ロスも最小限に抑えることができる。(作りすぎる状況を打破できる)
農業においても、逆算できる。
「ゴールが決まるから経営が始まる」。

経営士パートナーの会の視察ということで、今回は特別に、奥様の話を聞くこともできました。

鈴木社長いわく、農業法人化する時に、奥様が出資金にと約800万円用意をした。
奥様の行動をみて、覚悟が決まったのだそう。
社長1人が頑張ってもダメで、夫婦がそれぞれの立場で主導権を握り、両輪でタイヤを回さなければ、力は生まれない。両輪(バランス)が大事だと話してくれました。
「どんな農園にしていきたいか」を常に話しながら、【経営を大きくするのではなく、強い経営をする】ことで次の世代に農業を繋いでいきたい。と鈴木社長は話す。

今回、京丸園さんのお話を聞いて、奥様(女性)も、経営パートナーとして積極的に経営に関わることで、社長が1人で1輪を回すのではなく、奥様も積極的に経営に関わり、それぞれの立場で両輪で事業を回していくことで、農業も会社として、加速して事業を前に進めることができるのだと思いました。

それが実現できるためには、農業においても「経営力」と「どんな農園にしていきたいか=ビジョン」が必要だと思いました。

今回、鈴木社長、奥様のみどりさんにお話しを伺い、終始、仲の良さを感じました。お二人、試行錯誤しながら、二人三脚で京丸園さんを築かれているんだと思いました。
自分の農園でも、今回の学びを生かしていきたいと思います。

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