直して使う✂️🪡🧵修理は楽しい♪
福島からヤマト便が届いた。開けてみると、ボロボロになったショルダーバッグが出てきた。過日の工人まつりでブースを覗いてくださった方から、かつてご購入頂いた品の、修理の依頼を受けていた。
定番の双子バッグだけれど、布やパーツの付け方が今と違うので、15年以上前のものとわかる。折り返した部分の色を見ると、ずいぶん褪せているけれど、しみや汚れは全くない。
修理が無理なら同じ形のものを新しく、と添えられたお手紙にある。そこまでお気に召して頂いたなら、何としても再生させたい。直しが可能かどうか細部を確認。
擦り切れた上端は折り込まねばならないので、丈を少々詰めることになる。依頼主から電話があったので、その旨了解をとる。
肩紐は取り外し新しいものに変え、見返しを取り外し、本体を5ミリほど折り込んで、新しい見返しとマグネットを付ける。皮革は本体にカシメで止めつけてある部分は残して切り取り、新しい皮革を被せて、麻糸で縫い直す。底の四隅の擦り切れには中から布を当ててチクチク縫う。
直しの 段取りを立てて、必要な材料を集める。
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新しく作る方が、はるかに楽なのである。でも、愛着を持って、ずっと使い続けたい、という申し出は嬉しい。
友人が使ってくれている柿渋染めの帆布バッグは、数年を置いて染め直しを2度、痩せてきた持ち手は付け直し、千切れた金具を付け替え(千切れないけど、普通…)、擦り切れて穴の空いた本体には内側に布を当てて刺し子を加え…もう10年以上、通勤のお供をさせてもらっている。
手を離れた品が、何年も経ってボロボロになって戻ってきて、尚も使い続けてもらえるのは、作り手冥利に尽きる。
布や皮革は、経年によって劣化するだけではない。"育つ"のである。年月が育てる味が出てくるまで使って初めて、その素材の魅力に気付く。
通勤していた頃、愛用していた「一澤帆布」のバッグがくたびれてきたので、同じものを新調しようと、京都の店に立ち寄った折。棚に置かれた同色、同型のバッグを見て、あれ?
きれいな色の、パリッとした出来立てのバッグ。けど何か違う。手元の、数年使い続けて褪せた草色のくったりした方が、断然いいのである。
京都の旅で楽しみにしていた「一澤帆布」での買い物だったが、結局何も買わずに店を出た。擦り切れた持ち手は何度も布で補強した。四半世紀以上経った今も、愛用している。
その後、相続を巡ってのお家騒動で、解任された社長の信三郎氏は、新ブランド「信三郎帆布」を立ち上げ、このバケツ型バッグは作られなくなったが、裁判で信三郎氏が社長に復帰した後、復刻版の製品として再登場、「一澤帆布製」のタグも復活している。
「一澤帆布」や「土屋鞄」のように、しっかりした製品を、修理を請け負いながら長く使わせてくれる職人集団は、当時も今もずっと憧れである。
修理の依頼主は医療従事者と伺っており、忙しくしておられるようだ。購入時お渡しした名刺は、とうになくなっていただろう。4年ぶりに開催された工人まつりのブースに、遠くから足を運んでくださった。こんなやり取りができた時は、ものづくりは楽しい、としみじみ思う。
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